終戦から77年 平和を守る誓いあらたに 各地のとりくみ
今年の8月15日で第2次世界大戦終了から77年に。改憲の動きが強まる今日、戦争の実相や憲法について学んだり、平和を守る活動が重要となっています。各地のとりくみを紹介します。
戦争の被害と加害の歴史を学ぶ
長野・健和会/長野医療生協
【長野発】長野県民医連では、2つの法人が、新入職員研修に平和学習を取り入れています。
長野医療生協では、第2次世界大戦末期に長野市・松代の山中に掘られた地下壕(ごう)・松代大本営跡を見学しています。
大本営とは、天皇を頂点とする軍の最高司令部です。当時、戦争で劣勢に追い込まれていた日本政府が、国体護持と戦争継続のために、松代で大本営建設工事を開始。朝鮮人を含むのべ300万人が動員され、4000億円もの費用が投じられました。
さらにこの工事の最中、沖縄では時間稼ぎの戦いを強いられ、広島と長崎に原子爆弾が落とされ、ソ連の参戦による満蒙(まんもう)開拓団(日本がすすめた移民政策で、中国東北部に渡った移民)の悲劇が起こりました。暗くひんやりした壕の中で、ガイドの説明に真剣に耳を傾ける新入職員たちは、工事の犠牲になった人びとや、大本営完成の時間稼ぎのために失われた多くのいのちに思いをはせています。
健和会では、阿智村にある満蒙開拓平和記念館を見学しています。第2次大戦中に国策として行われた満蒙開拓移民事業によって、長野県から全国でもっとも多い3万4000人が移り住み、敗戦後、ソ連軍の侵攻によって多くの移民がいのちを落としました。
見学を通じて、戦争に巻き込まれた人びとの悲惨な歴史をより身近に、より深く知ることができます。見学した新入職員からは「満蒙開拓に加わった人たちは戦争の被害者でもあり、加害者でもあるという事実に衝撃を受けた」「平和の大切さをあらためて実感した」などの感想が。なぜ自分たちは平和や人権、憲法について学ぶのか、その大切さを感じる研修となっています。(田村昌美、長野医療生協・事務/平沢ふみ子、健和会病院・看護師)
被爆者のたたかいに感動
長崎民医連
【長崎発】7月16日、当県連の第2期平和学校が開講しました。年間を通じて、平和に関する学習を連続的にとりくむこの企画も、今年で2年目。今期は5人の受講生が集まりました。
第1講座は「長崎民医連と平和運動~松谷訴訟について~」。2000年に最高裁勝訴で終わった「長崎原爆松谷訴訟」とは何か、長崎民医連としてどのようにかかわったのか、どんな壁があり、どんなサポートがあったのかなど、さまざまなことを学びました。講師は、「松谷訴訟を支援する会」事務局をしていた、元民医連職員の牧山敬子さんです。3歳のとき爆心地から2・45kmで被爆した松谷英子さんは、爆風で飛んできた瓦が頭に当たり、重傷を負って、右手右足が麻痺(まひ)するなど、後遺症に苦しみました。2度にわたる原爆症認定申請はいずれも却下。12年近い裁判をたたかい、2000年7月に長崎地裁、福岡高裁、最高裁と3度の完全勝訴を勝ち取って原爆症と認定されました。
国家が起こした戦争によって、また原爆によって被害が起きているのに、どうして容易に認めようとしないのか、国の不条理さを感じるとともに、どんなに困難でもあきらめずにたたかい続け、勝利した歴史を聞き、感動しました。
第2講座は9月、被爆遺構めぐりのガイドとなるための学習をします。来年2月の卒業式まで、合計6回の講座を学びます。(松延栄治、事務)
友の会といっしょに反戦平和展
千北診療所
【大阪発】千北診療所と西淀川・淀川健康友の会千北支部は、毎年、反戦平和展を開催しています。今年も7月22日から8月31日まで、千北診療所の待合で、反戦平和展を行っています。
今年の展示は、(1)横断幕、(2)ヒロシマ・ナガサキの写真パネル、(3)大阪大空襲の写真パネル、(4)3・1ビキニ被ばくの写真パネル、(5)東日本大震災の福島第一原発事故の写真、です。
(2)以外は、すべて手づくりで、友の会と職員でパウチ加工したものです。コロナ前は、手づくりの防かん服のレプリカや、当時の赤紙の展示なども行っていました。
反戦平和展は、友の会の森脇保さん(76)の呼びかけで始まりました。森脇さんは、戦争を直接体験していませんが、「悲惨な戦争は決してくり返してならない」と決意しています。幼少時代、祖父から戦争の話を聞かされて育ちました。ある日、幼い森脇さんが子ども心に「おじさん(父の弟)は戦死したのに、なんで戦争に行かせたんだ?」と祖母にたずねると、なにも答えられずに黙っていたことを鮮明に覚えていました。
展示は毎年注目され、「これが大阪空襲か、これは大阪城か、これは本町の地下鉄の入口か?」などと驚く人も。患者や、日曜日の外国人集団健診で来た受診者などが、食い入るように見ているそうです。
藤ノ木歩事務長(32)も、「戦争の悲惨な写真を見て、ぞっとします。どの国の誰もが戦争の加害者になってはいけないと思う。いのちを守る医療機関だからこそ、対極にある戦争はあかんということを伝えて行かなければ」と語ります。
会場では、核兵器廃絶署名も訴えています。(勘解由貢一、淀川勤労者厚生協会・事務)
「できるところから行動を」
神奈川民医連
【神奈川発】神奈川民医連は、7月16日、第24回ピースフェスティバルを横浜市内で開きました。あいにくの雨でしたが、県内の民医連職員と共同組織135人が参加。感染防止策を徹底しながらの開催となりました。
文化企画は、カンカラ三線(さんしん)で有名な演歌師の岡大介さん。世相を反映した歌で参加者の笑いを誘い、心をつかみました。学習企画として、川崎合同法律事務所の中瀬奈都子弁護士が「憲法9条を守り平和に生きる」をテーマに講演。改憲勢力が、衆参両院ともに3分の2を超えた今、「いつ改憲発議が出てもおかしくない。国民投票が実施されても否決できるように、私たちはできるところから行動しよう」と話しました。
最後に第21期平和学校の受講生10人による卒業発表が。10カ月間の学びをしっかり、自分たちの言葉で表現してくれました。(片倉博美、事務)
(民医連新聞 第1766号 2022年8月15日)