第45期第1回評議員会方針(案)のポイント 岸本啓介事務局長に聞く
全日本民医連は、8月20~21日に開く、第1回評議員会の方針(案)を出しました。45回総会から半年が経過し、当面の方針の重点について、全日本民医連の岸本啓介事務局長に聞きました。(長野典右記者)
■情勢の共通認識
新型コロナウイルス感染症は、第7波を迎えました。感染拡大は第6波を上回り、過去最大級の感染規模となっています。すべての職員に、あらためて「感染しない・させない」の観点から、日常業務と行動の再点検、法人の行動指針を遵守し、現場に過度の負担がかからないようにBCP(事業継続計画)の見直しや診療体制のあり方を検討しましょう。新型コロナによる医療崩壊を防ぐため、最大限の努力を呼びかけます。
今回の第1回評議員会の焦点は、(1)45回総会以後の情勢についての共通認識、(2)軍事大国化・社会保障切りすてに抗し、いのち優先の社会をめざす展望と民医連の役割、(3)医師・経営部分野を中心に、全国的な実践と課題を共有することです。
2月24日にロシアがウクライナを侵略するなか、6月21~23日に核兵器禁止条約締約国会議が開かれ、「ウィーン宣言(核兵器のない世界への私たちの誓約)」と「ウィーン行動計画」を採択しました。ロシアが核兵器使用の威嚇をくり返し、他の核兵器保有国も核兵器の強化を唱えるなかでも、核兵器のない世界に向かう揺るぎない世界の意思を示しました。この成果をつくりだしたのは、核兵器の非人道性を訴え続けてきた日本の被爆者、核実験被害者、被爆3世など若者たちの声、訴えです。
■社会保障解体の骨太の方針
岸田内閣は、22年「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」をまとめました。(1)日本の軍事大国化路線を打ち出す、(2)格差と貧困はさらに拡大、(3)さらなる社会保障の解体を打ち出し、平和といのちに真っ向から対立する社会像を描く内容です(本紙7月18日号の4~5面参照)。23年度予算の概算要求でも、年金・医療などにかかる自然増5600億円の削減が示され、防衛費の増額は、議論を経て検討するとされています。
内閣は「これまでの新型コロナ対策を徹底的に検証する」と有識者会議を立ち上げました。しかし、会議のまとめは、(1)今後の感染症危機発生時、病床は増やさない、(2)医療が機能しなかった原因の人的体制の不足を解消する意思や計画もない、(3)自宅・宿泊療養者などへの医療提供体制の確保は医療機関との委託契約や、ペナルティーで対策をすすめる、(4)保健所、公務員や保健師の削減などの保健所業務破たんの原因には一切触れない内容です。民医連は、国に撤回を求めていきます。
■地域要求の実現で共闘を
今年の7月の参議院選挙は、これまで2回の参院選で実現してきた32ある1人区での野党共闘による野党候補の一本化が崩れたことが、大きく選挙結果に影響しました(本紙8月1日号の4~5面参照)。議席の上では改憲発議が近づいているとも見えますが、参院選で有権者が託したのは、経済、社会保障、暮らしです。憲法改正は5%に過ぎません(NHKの出口調査)。また改憲勢力間でも改憲内容の一致点はなく、改憲案発議の条件は整っていません。
ひきつづき、医療・介護報酬の抜本的な引き上げや、地域医療構想見直しなどの課題を地域ぐるみで、総がかりの運動としてすすめ、要求の実現、地域で市民と野党の共闘をすすめましょう。
■医師・経営分野での前進を
医師分野では、(1)奨学生500人、初期研修医200人、後期研修医100人確保、(2)「かかりつけ医」の法制化、(3)医師の働き方改革について、「大切文書」も使いながら、議論して、深めてほしいと思います。質の高い医療を提供していくには、医師数の絶対的な不足の解消が必要です。医師の働き方改革のための大ウエーブにもとりくんでいきましょう。病院長会議や、常勤医師確保のための全国会議も準備していきます。
経営分野では、この2年間のコロナ補助金、コロナ禍での費用減で、21年度決算は過去最高の経常利益率となる見込みです。いのちを守る運動やたたかいの成果ですが、患者減、健診数減などで収支構造は大きく後退しています。自らの法人・事業所の経営を複眼で多面的にとらえ、総合的に評価することが必要です。経営戦略、中長期経営計画の確立を、全職員参加ですすめていきましょう。
第1回評議員会での積極的な議論を期待します。
(民医連新聞 第1766号 2022年8月15日)