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民医連新聞

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副作用モニター情報〈579〉 排卵誘発剤による卵巣過剰刺激症候群

 2022年4月から不妊治療が保険適用になりました。この不妊治療に用いられる排卵誘発剤の副作用として、卵巣過剰刺激症候群(OHSS:ovarian hyperstimulation syndrome)があります。OHSSは排卵誘発剤によって過剰に卵胞が刺激された結果、卵巣が腫大し、腹水がたまることで腹部膨満感、体重増加、腹囲増加を認めます。
 今回、ゴナールエフ皮下注用®(ゴナドトロピン製剤)とヒト絨毛(じゅうもう)性性腺刺激ホルモン(hCG)製剤によってOHSSが発症したと考えられる症例を紹介します。

症例)20代女性(治療開始前の体重不明)
1~14日目:ゴナールエフ投与
15日目:hCG製剤投与
27日目:嘔気(おうき)、下痢出現
30日目:つわり症状強く受診。軽度下腹部痛、高度脱水、少量腹水貯留、両側卵巣が多嚢胞(のうほう)性に腫大。不妊治療のホルモン剤投与も行っており、OHSSとして入院。アルブミン(Alb)3.1g/dL、Dダイマー7.5μg/mL、体重51kg、補液開始
31日目:腹水2.5L採取後、腹水ろ過濃縮再静注法(CART)実施、体重53kg
34日目:正常子宮内妊娠を確認
36日目:両側胸水著明、体重51.9kg
38日目:尿量減少、腹水、腹部膨満感悪化、再度CART実施、体重50.6kg
44日目:Alb2.9g/dL、Dダイマー23.9μg/mL(血栓はなし)
47日目:体重46kg
67日目:Alb3.6g/dL、Dダイマー5.6μg/mL、体重42.5kg、つわり症状、胸水、腹水ともに改善傾向のため退院

* * *

 OHSSのリスク因子は、若年、やせ、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、ゴナドトロピン製剤投与量増加、血中エストラジオール値の急速な増加、OHSSの既往、発育卵胞数の増加と生殖補助医療における採卵数の増加、hCG投与量の増加、hCGの反復投与、妊娠成立、とされています。
 本症例では、若年、ゴナドトロピン製剤投与量増加、hCG投与量の増加、妊娠成立が当てはまり、発症リスクがあったと考えられます。
 OHSSの発現頻度はおよそ5%程度ですが、重症例では腎不全や血栓症などさまざまな合併症を引き起こし、死亡例も報告されています。OHSSは原因薬剤の中止で回復することもあるとされています。早期発見のため、患者への初期症状(腹部膨満、嘔気、体重増加)の説明や治療開始前の発症リスクの評価が重要でしょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1766号 2022年8月15日)

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