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民医連新聞

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コロナ禍で貧困は確実に悪化 地域へのアウトリーチ活動を 2021年 子どもの生活実情調査

 全日本民医連小児医療委員会は、佛教大学の武内一教授と共同して、子どもの生活実情調査を2015年、19年、21年と3回行ってきました。21年調査の概要について和歌山生協病院の佐藤洋一さんの報告です。

 コロナ禍の影響を明らかにするために、2019年6~7月に実施した調査(以下、19年調査)と2021年9~10月に実施した調査(以下、21年調査)の比較検討を行いました。19年調査で小中学生の子を持つ世帯は、1158世帯で貧困群98世帯(8・5%)、境界群97世帯(8・4%)、非貧困群963世帯(83・2%)。21年調査では735世帯で、貧困群60世帯(8・2%)、境界群42世帯(5・7%)、非貧困群633世帯(86・1%)でした。21年調査では、アプリの不具合で、今回の検討では生活保護利用世帯は除外しています。

学校の長期欠席増

 19年調査と21年調査の比較で、「病気による欠席」「時間外受診」「受診控え」の割合が少なくなっていました。新型コロナウイルス感染症対策で、子どもたちの急性疾患の罹患(りかん)の減少が影響していると考えられます。一方で、「長期欠席(1カ月以上)」「インフルエンザワクチン接種」の割合が多くなっています。新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行が懸念され、インフルエンザワクチン接種の必要性が、マスコミなどで報道された影響がインフルエンザワクチン接種の増加につながったと思われます。

自己負担困難な貧困層

 貧困世帯への影響を検討したところ、「受診控え」は18・4%(19年調査)から26・7%(21年調査)と増加し、非貧困世帯に比べて有意に高い傾向が見られます。受診控えの理由では、貧困世帯、非貧困世帯ともに「忙しくて受診する時間がなかった」がもっとも多く、貧困世帯では「自己負担金を支払うのが難しかった」と答えている割合が非貧困世帯に比べて有意に高い傾向がみられます()。また、「インフルエンザワクチン接種」に関しても、46・9%(19年調査)、から51・7%(21年調査)と軽微な上昇のみで、非貧困世帯の接種状況との開きは大きくなっています。貧困世帯の経済状態がコロナ禍により悪化している状況がうかがわれます。
 さらに、「過去、1年間に支払いが困難であったかどうか」は、すべての項目で貧困世帯は非貧困世帯に比べて有意に高くなっています。19年調査と比べて21年調査では、支払いが困難な割合も貧困世帯では増加。貧困世帯が医療機関に受診する機会が減少しています。コロナ流行前では、診察室で経済的に困難な親子の把握が比較的行えていたのが、コロナ後はその姿を捉えることが難しくなっています。
 しかし、支払いが困難な状況から「貧困」は確実に悪化しています。コロナ禍で見えづらい「貧困」を把握するために、アウトリーチの活動が今後重要になってくるでしょう。

リモート授業契機に不登校

 非貧困世帯での「長期欠席」の割合が、2・1%(19年調査)から7・2%(21年調査)へ増加し、貧困世帯との差がなくなっています。学校でのコロナ感染を危惧しているケースや、心身の不調を訴えることが多くなっていると考えています。
 先日も、リモート授業をきっかけに生活リズムが崩れ、その後、不登校となったケースの相談がありました。また、毎朝、お腹の痛みを訴え、学校を休み、自宅では元気に過ごしているケースもありました。新型コロナウイルス感染症が、子どもたちのメンタルヘルスに大きな影響を与えていることを実感しています。

子育て世代の困難に目を

 この調査は、デルタ株の流行時に行ったものです。オミクロン株は、デルタ株に比べて小児への感染も多く、流行の規模は格段に異なっています。さらにロシアのウクライナへの軍事侵攻を契機に、食糧危機や物価高騰などで国民生活はさらにひっ迫しています。
 すべての子どもたちが健やかに成長・発達できるように、子育て世代の困難な状況に目を向けて、医療活動にとりくみましょう。コロナ対応で大変な状況ですが、今こそ、民医連の出番です。

(民医連新聞 第1765号 2022年8月1日)