診察室から 仲間とともに、志を信頼の医療へ
新型コロナウイルス感染症の流行当初、発熱患者に対して、感染の懸念から、必要と思われる診療・治療ができず、苦い思いをした経験があります。
「このままでは、患者さんと職員のいのちを守り切れないのではないか」との思いから、スペースも予算もないなか、事務長、事務主任、看護主任と私の4人で連休を返上し、発熱外来をつくることにしました。駐車場から直接出入りできる女子更衣室を利用して、ベニヤ板に穴をあけ、ビニールシートを天井からつるし、電動ドライバーやのこぎりを手に、試行錯誤でつくり上げました。診療の合間にも防護服を着る必要もなく、急な発熱患者に対応できています。患者、職員のいのちを守りつつ、親切でよい医療が実践できているのではないかと思っています。民医連を知らない他施設から来た新人看護師にもその意味が実感できているようで、他の医療機関との違いなどから、いい医療をしている実感があると言います。
発熱外来には、かかりつけ医から診察を断られ、困り果ててやっとたどり着いた患者も。その患者さんは、今では家族を連れて受診しており、私たちに信頼を置いてくれているのだと感じています。
私は8年前、定年退職を機に大阪から、福島支援を目的に喜多方にやってきました。「困った人に役立つ仕事をするのが使命」との思いを実現するためです。これを可能にしたのが大阪民医連、福島民医連、全日本民医連などの連携です。(特に大正民主診療所前所長の山下健先生に感謝します)
また、原発事故による小児甲状腺がんへの不安が多いなか、大阪民医連からポータブルエコーが寄贈され、宮城県山元町にて甲状腺検査をボランティアで開始し、のべ700人以上の子どもたちに実施。県境を越えた民医連の仲間のサポートが、困難を抱えた多くの人に安心をもたらしています。この場を借りて、深く感謝します。
今後も仲間とともに、医療従事者としての志を実践できればと思っています。(岡内章、福島・医療生協きたかた診療所)
(民医連新聞 第1765号 2022年8月1日)