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民医連新聞

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気候危機のリアル ~迫り来るいのち、人権の危機~ ②気候危機の原因と私たちの責任 文:気候ネットワーク

 気候危機の原因は、化石資源の利用による二酸化炭素(CO2)の排出が主です。世界全体では、中国の排出量がもっとも多く、アメリカ、インド、ロシアに次いで日本は5番目です。国民1人当たりの排出量は欧米、日本などの先進国が多く、インドやアフリカ諸国など途上国は多くありません。さらに歴史的な累積排出量も多くを先進国が占めるため、先進国には気候危機への大きな責任があります。
 人類は産業革命以降、2兆3900億トンのCO2を排出してきました。それに対し、気温上昇を
1.5℃以内に抑えるために残された排出可能な
CO2(カーボンバジェット=炭素予算)は、4000億トンとされています。しかし、現状の各国における2030年削減目標を足し合わせると、2.4℃程度の上昇になるとも試算されており、いっそうの削減目標の引き上げが必要です。
 日本では、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」が発表され、2030年の削減目標は46%(2013年度比)になっています。しかし、世界全体のカーボンバジェットを人口比で計算すると、日本のカーボンバジェットは65億トンしかありません。日本は現在、毎年11億トン程度排出しているので、このまま排出を続けるとすぐに使い切ってしまうことになります。一部には2050年脱炭素に向けて、革新的な技術開発に期待し、中期の削減対策を先延ばしにしても良いという考えもあります。しかし、2030年までに大幅削減(60%以上)をめざす方が、コストもリスクも低く抑えて累積の排出量を削減することができ、2050年脱炭素へのソフトランディングが可能になります()。2030年までに優先すべきことは、実現性の低い技術の開発ではなく、今ある技術の活用と社会・経済制度を変えることです。
 気候危機の根本的な原因は、化石資源に依存した大量生産、大量消費、大量廃棄の社会・経済制度にあります。現代社会はグローバル化がすすみ、大量の情報が共有され、人が早く遠くまで移動し、多くの製品や食料が遠方から運ばれてきます。しかし、そのためのエネルギー使用も膨大で、環境への負荷も大きく、海外での水資源、森林資源への悪影響も引き起こしています。私たちには、子どもたちや、これから生まれてくる世代への責務として、この価値観と社会システムの転換をすすめ、脱炭素社会に移行することが求められています。(田浦健朗)


気候ネットワーク

1998年に設立された環境NGO・NPO。
ホームページ(https://www.kikonet.org

(民医連新聞 第1765号 2022年8月1日)

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