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民医連新聞

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にじのかけはし 第9回 それでもヒットをねらい続ける 文:吉田絵理子

 LGBTの活動をしていると、落ち込んだり、傷つくようなことがあります。そんな時、私をささえてくれる言葉を紹介します。
 「絵理子は変わっているけど、まともだと思う」。LGBT当事者として、名前と顔を出して活動してもいいか父と姉に相談した際に、父からかけられた言葉です。父は青年期から統合失調症を患っていて苦労がとても多い人で、世間体を気にすることがまったくありません。カミングアウトした時にも、私のあり方を否定せずに、私自身が幸せであることが一番大切だと言ってくれました。
 「マイノリティーはツールになる」。研修医の時に、産婦人科の指導医だったL先生の言葉です。川崎協同病院がある桜本には、在日コリアンの人が多く住んでいます。自身も在日コリアンであるL先生は、韓国語を話せることで地域の産婦人科医として、とても信頼されていました。当時、私は職場ではまったくカミングアウトしていませんでしたが、この言葉が心に響きました。私にとってセクシュアルマイノリティーであることは、かつては苦しいことでしたが、今は1つのツールとして生かされていると感謝しています。
 「まず、相手が何を恐れているのかをよく聞くこと」。トランスジェンダーの子をもつ活動家が、“対話が成り立たず、攻撃してくる相手と、どうかかわるか”という問いに対して答えた言葉です。ひどく差別的な言葉を投げかけられた時に、怒って拳を振り上げるのではなく、相手をよく知ろうとする姿勢を保つというのは、簡単なことではありません。
 「たとえ負け試合だとしてもヒットをねらい続ける」。川崎協同病院のSDHにとりくむ多職種チームで、参議院選挙前に政治と選挙を語り合った場でのSW、Tさんの一言です。LGBTに関する差別的な言動をした国会議員が再選し、同性婚に反対する政党が圧勝するのを見るたびに絶望的な気持ちになる私にとって、この語り合いはとても勇気づけられるものでした。
 言葉は常に人から投げかけられるものです。私が活動を続けられているのは、語り合える仲間や家族がいてくれるから。みなさんが寄せてくれる感想やお便りにも、いつも力をもらっています。


よしだえりこ:神奈川・川崎協同病院の医師。1979年生まれ。LGBTの当事者として、医療・福祉の現場で啓発活動をしている。

(民医連新聞 第1765号 2022年8月1日)