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民医連新聞

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相談室日誌 連載522 アウトリーチでいのちつなぐ 主治医の気づきで自宅訪問(鳥取)

 Aさんは70代女性。独居、夫は他界、子どもはおらず、他に身寄りはありません。不安神経症で週2回当院の内科に通院中です。それ以外に「胸が苦しい、一人が不安」と、夜間頻回に救急外来を受診していました。看護師が独居生活を気にかけて介護保険サービスを勧めていましたが、拒否していました。
 ある日、かならず来る定期受診の日に来ないので、主治医から「嫌な予感がする」と自宅訪問の指示がありました。看護師とSWが急きょ自宅を訪問。声かけに応答がなく、玄関は開いていました。110番通報し、警察が到着するのを待たずに先に安否確認するよう指示があり、電話をつないだまま中に入ると、ゴミや衣服で足の踏み場はなく、尿臭があり、2階で仰向けに布団もかけず倒れているAさんを発見しました。失禁し、冷たくなって震えていました。当日はクリスマスで大雪でした。救急要請し、脱水症で当院に入院。「猫に餌をやらんといけんけ、家に帰りたい」と、本人が一番に心配したのは猫のことで、知人が持ち回りで入院中、毎日2回餌やりをしてくれました。
 今まで介護サービスを拒否していた理由を聞くと「家を見られるのが恥ずかしかった。いのちを助けてもらってよかった。もう家を見られたし掃除を手伝って」と希望がありました。
 介護保険を申請し、要支援2を取得、ケアマネジャーに介入を依頼しました。1階、2階ともゴミの山だったので廃棄物処理を清掃業者に依頼。退院までにケアマネジャー、SW、自費利用のヘルパーが訪問し、家の中を片づけました。ヘルパーを週1回、配食弁当、ベッドレンタルを利用し、自宅退院しました。退院後も知人から本人と連絡がつながらないなどの相談があり、大家やケアマネジャー、民生委員と横のつながりが増えていきました。
 独居で不安があるけれど、一人で掃除ができないうちに生活環境が荒れ果てて、相談できない気持ちになっていたAさん。凍える寒さで真っ暗ななか、Aさんを発見したとき、まさかと息をのみました。治療だけでなく、異変に気づき、地域に出向いて生活実態をみることは、他の病院ではあまりないことだと思います。
 主治医、看護師の気づきからいのちがつながり、まさに、アウトリーチの大切さに気づかされた、民医連ならではの支援だったと思います。

(民医連新聞 第1764号 2022年7月18日)