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民医連新聞

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副作用モニター情報〈577〉 パクリタキセル注による酩酊(めいてい)・たこつぼ型心筋症

 パクリタキセル注(PTX)は、ひろく使用される抗がん剤ですが、薬剤を溶かすためにビール500mL相当のアルコールが添加されています。
 今回、アルコール不耐性患者にPTX注を投与したことで、酩酊、および、たこつぼ型心筋症を発症した症例が報告されましたので、紹介します。

症例)
 70代女性。卵巣がん手術目的で入院、術前化学療法としてTC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)施行が予定されていた。薬剤師による聞き取りの際にアルコール不耐症が発覚したが、主治医と相談した上で、翌日のTC療法は予定通り実施することとなった。
 PTX注開始20分後に手指のしびれ、開始60分後に顔面紅潮と呻吟(しんぎん)が出現。対症療法を実施し、PTX注は継続、予定どおり3時間で投与終了した。
 PTX注投与終了2時間後、再び呻吟が出現。さらに1時間30分後、心電図異常(ST上昇)が出現。緊急心臓カテーテル検査・治療が実施され、たこつぼ型心筋症と診断された。その後、左室壁運動が改善し、経過良好。

* * *

 アルコール不耐症患者にPTX注を投与する際の対策は、以下の2点があげられます。
(1)投与速度を遅くし、症状を見ながら投与する
(2)投与前後で水分補給や補液を行う
 今回の症例では十分な補液が行われていましたが、投与速度を変更するなどの対策が不十分でした。
 たこつぼ型心筋症の発症機序については身体的・精神的ストレスにともなう交感神経の過剰興奮、冠動脈の多肢痙攣(けいれん)による気絶心筋、カテコラミンの異常分泌が指摘されており、アルコール不耐症患者へのアルコール投与が引き金になった可能性は高いと考えられます。
 PTX注投与前は飲酒エピソードを具体的に聞き取ること、アルコール不耐症が疑われる場合には十分な対策と観察を行うことが重要です。
 なお、現在はアルコール負荷の少ないプロトコールも作成されています。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1764号 2022年7月18日)

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