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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 情報の提供、共有で退院支援 自宅での生活を視野にリハビリも介入 在宅復帰をめざした多職種とのかかわり 愛媛・新居浜協立病院

 地域包括ケア病棟は、急性期を脱し、病状が安定した患者に対して、在宅や介護施設への復帰に向けた医療や支援を行う役割をもっています。愛媛・新居浜協立病院では、脳梗塞の嚥下障害で経鼻経管栄養を行っていた患者への在宅復帰支援を行いました。第15回学術運動交流集会で栗田明子さん(看護師)が報告しました。

 Aさん60代男性。既往歴として糖尿病、脳梗塞、高脂血症、慢性胃炎があります。入院までの経過は、意識障害と右下肢痛にて救急搬送され前医へ入院し、高血糖と右下腿感染を認め、切断術を行いました。
 しかし、意識障害や嚥下障害が続いたためMRI検査を行い、脳梗塞を発見しました。経口摂取を試みましたが安定量の摂取にはいたらず、経鼻経管栄養を開始しました。その後状態が安定したため、療養継続目的のため当院に転院となりました。

■言語聴覚士が介入

 入院時Aさんは、経鼻胃管より栄養を注入していましたが、介護抵抗や暴力、経鼻胃管の自己抜去などの行為があったとの情報があり、前医と同様に両手ミトンを装着したうえで抑制もひきつづき行いました。
 入院直後より言語聴覚士が介入し、2週間ほど経管栄養と経口摂取を併用しました。
 その結果、経口摂取可能と判断され経鼻胃管を抜去し、経口摂取のみとなりました。食事も開始当初は、食事介助が必要でしたが、ポジショニングやベッドの角度などを言語聴覚士が調整し、Aさんの嚥下状態に合った体位に整えセッティングを行うことで、自力での摂取も可能となりました。食事形態もミキサー食から全がゆとなり、自宅での生活も視野に入れることができました。また、医療スタッフだけでなく、家族でも体位のセッティングが行えるよう図でしめすことで、家族の理解や協力も引き出すことができました。
 経管栄養を終了したことでミトンの着用や抑制の必要がなくなり、拘束するものがなくなるにつれて、不穏行動や暴言に近い言動はほとんどみられなくなっていきました。
 ナースステーションでいっしょに過ごしたり、ベッド上でも本を読んだりと穏やかに過ごしていくなかで、 笑顔を見せ、 冗談を言うことも多くなっていきました。

■妻への負担も軽減

 リハビリの介入も、ただADLの改善に努めるだけでなく、自宅での生活を視野に入れて、軽介助で車椅子に移乗ができるよう訓練しました。糖尿病に対しては1日3回のインスリン注射にて対応していましたが、退院後は妻がインスリンを実施できるよう調整を行いました。その結果、夕食前の1回だけで血糖コントロールができるようになり、妻への負担も軽減できました。
 今回、看護師、介護士、SW、医師、リハビリ、薬剤師、栄養士が一つのチームとなって情報提供、情報共有ができ退院支援を継続したことで在宅復帰へつながったのではないかと考えます。

■患者・家族の思い尊重

 Aさんの場合は、以前から金銭的な問題もあり、施設という選択肢はありませんでした。カンファレンスを設け、家族の思いを尊重し自宅への退院と再確認した結果、在宅復帰という方向性で一致しました。
 退院支援において、すべての職種で同じ目標を持ち、連携し、援助することで、家族や患者の思いに寄り添うことができ、より良い看護の提供につなげることができると再確認できました。

(民医連新聞 第1763号 2022年7月4日)