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民医連新聞

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相談室日誌 連載519 在留で生保申請困難な事例 外国籍住民への医療支援を(東京)

 Aさんは40代の男性。COVID―19にかかり、その退院のすぐ後に脳出血を起こし、リハビリ目的で当院に転院してきました。
 それだけでもショッキングな出来事ですが、Aさんは外国籍住民、という「困難」も抱えていました。元々外国料理の店で働いていましたが、コロナ禍で収入が激減していたところに追い打ちのように発症しました。
 これまで主な稼ぎ手はAさんでしたが、Aさんの発症後は、妻のパート収入だけで2人の子どもを養い、生活しなければなりません。しかし、それだけではとても足りない状況で、家賃も滞納していました。日本国籍の住民なら生活保護の受給申請を支援するケースですが、専門職としての「技能」という在留資格のため、生活保護申請ができない状況であり、少ない収入で生活をせざるを得ませんでした。
 そんな状況下でも、「お金は何とかするからリハビリはきちんとやってほしい」という家族などの希望もあり、少しでもAさんに良くなってほしいという思いが職員にひしひしと伝わってきました。しかし、すでにコロナ関係給付はすべて受けており、友人からの借金も重ね、国保料も滞納している状況で、とても医療費を支払える状況ではありませんでした。
 医療費の問題は無料低額診療事業で解決することとし、半年間のリハビリをきちんと続けることになりました。リハビリの結果、Aさんは無事歩けるようになり、退院しました。しかし就労がすぐにできる身体ではなく、根本的な問題は解決していません。
 Aさんの事例では、明らかに生活保護により生活再建と医療の保障がなされるべき事例なのですが、「外国籍」という理由だけでそれができない現実があります。外国籍住民でも永住権を持っている人や難民認定者など、一部に限って認めているものの(それも「準用」という扱いであり権利ではない)、多くの外国籍住民の生存権は無策のまま放置されているのが現状です。国としては、「就労や就学で来日している外国人は、働けなくなったり学べなくなったりすれば速やかに帰国せよ」というスタンスであり、それぞれが抱える個人的事情はまったく顧みられず、「人間」として見ていないことは明らかです。
 国には、このような考え方を早々にあらため、外国籍住民に対しても現実に即した支援をする姿勢が求められています。

(民医連新聞 第1761号 2022年6月6日)