フォーカス 私たちの実践 メニュー表改善で食事を楽しむ 「食」を選択できる仕組みづくり 千葉・デイサービスセンターからたち
デイサービスでは、利用者の食の楽しみ方も生活の質を向上させることにつながります。千葉・デイサービスセンターからたちでは、利用者が食を選択できる仕組みづくりにとりくみました。第15回学術・運動交流集会での宮原理沙さん(介護福祉士)の報告です。
デイサービスセンターからたちは、安心・安全で無差別・平等の介護事業を幕張地域で運営してほしいという地域の人たちの熱い要望と支援を受け、2003年に開設しました。利用定員は30人、平均介護度は2・5。モットーは「利用者も職員もとことん楽しむ」です。
■写真をイラストに
当施設では、利用者が楽しみながら自己決定するための仕組みづくりの一つとして、決められた統一メニューではなく、8~9種類のメニューから、「好きなもの」「食べたいもの」を毎回選べる昼食を実施しています。飽きがこないようにメニューは4カ月ごとに変更しています。
しかし、たくさんのメニューの中から、ページをめくることなく毎回同じものを選んだり、選ぶことを負担に思っていたりする利用者もいました。食べることへの興味や欲求は、身体だけでなく心の健康にもつながります。
そこで食事のメニューに興味を持ち、食べたいものを選びたいと思うには、どうしたらよいかを考え、今回はメニュー表の改善にとりくみました。
まず、「利用者はどうして同じものばかり選ぶのか」を考えました。メニュー表がめくりづらく、最初のページのみ見ただけで決めてしまう、写真では茶色のものが多く、また器も同じため、見分けがつきにくいことがわかりました。
そこで、メニュー表は、写真ではなく、興味をもってもらうためにイラストで作成することにしました。職員の個性的な絵で、カロリーと塩分量も記入することにしました。すると利用者からは、「イラストでわかりやすく、メニュー表を眺める楽しみもできた」などの高い評価の声が聞かれました。
■見開きで見やすく
しかし、はじめのページばかりから頼む人は変わりませんでした。職員から「メニュー表がめくりづらいのではないか」「ページをめくっている間にメニューがわからなくなってしまい、最初のページから選択してしまうのではないか」「食べたいものがないのではないか」などの意見が出ました。
そこで、次のメニュー表の改善として、見開きのバインダーに変更し、食欲をそそるコメントもつけました(写真)。一目ですべてのメニューが見られることで、「比べて選ぶ」ことができるようになりました。利用者からは「お店屋さんみたいだね」との好評の声も。
料理の味や特徴のコメントを入れることで、選ぶときの参考になりました。6冊のメニュー表ごとにコメントや挿絵を変えることでメニュー表を見ることが楽しくなりました。同じメニューばかり選んでいた人にも変化が見られるようになりました。メニューを入れ替える時、利用者に食べたいもののアンケートも実施。食を楽しむための改善をくり返しています。
メニュー表が「見る・読む・選ぶ」ことの楽しみにつながっています。選べる昼食は本来の目的以上の効果がありました。
当施設では、その他の食のとりくみとして、季節の行事に合わせた「お楽しみ食事会」や毎月1回の「サンドイッチの日」、現在は休止中ですが、みんなでつくる「手づくり昼食会」なども行ってきました。
■個性と意見を尊重し
利用者の生活の質を向上させるために、職員がさまざまなとりくみをしても、職員の思いや考えだけでは空回りすることが多くあります。利用者が主体であること、利用者の個別性を尊重すること、利用者自身の意見を聞くこと、自己決定しやすい工夫や環境があることをベースに、発想を柔軟に職員が工夫することが大切です。
(民医連新聞 第1761号 2022年6月6日)