相談室日誌 連載517 身寄りない死亡時の対応 思いを集めて寄り添う支援(宮城)
東日本大震災から11年がたちました。被災地では全国から復興作業や除染作業の仕事を求め、住み込み可能な日雇い事業や派遣会社に作業員が集まり、一時期、無保険や身寄りのない患者の支援が続きました。
このような状況は被災地の特徴ですが、それ以外にも地域から孤立して、生活していた人、支援者がシャドーワーク(無報酬の仕事)を行いながらささえていた身寄りのない人などに出会うことが増えました。なかでも、亡くなった時の対応についての介入が、年々増えています。
Aさんは60代の男性です。数年前に他県から転入し、住み込みで土木関係の仕事をしていました。1カ月前から体調不良が続いており、就労困難な状況でした。症状が進行し、自ら救急要請し、当院に入院しました。治療中に末期がんがみつかり、予後が短い状態でした。
本人に生活状況を確認したところ、両親はすでに他界し、他県にきょうだいがいましたが協力を得ることはできず、身寄りがいない状況でした。経済状況から医療費の支払いは難しく、本人の意向を確認して自治体へ医療費の急迫保護を相談しました。また、病状から亡くなった時の対応についても調整が必要なため、自治体へ相談を行いました。自治体と情報共有や役割分担を行うことで、スムーズに連携をとることができました。Aさんは、入院10日後に死亡退院しました。
Aさんのような住み込みの日雇い労働者は、就労ができなくなると収入と同時に住居をも失います。何かのきっかけで家族関係が希薄になり、他者や地域とも疎遠な場合は、体調不良時に早めに気づいてくれる人や受診を促してくれる人、相談できる人がいないことも多く、重篤化や手遅れになることもあります。SDH(健康の社会的決定要因)の視点で患者背景を捉えた時、自己責任という言葉のもと、弱者には厳しい現状があります。
SWとの出会いは患者の人生のなかのほんの一時ですが、患者を取り巻く環境から本人の思いや考えを集め、少しでも不安が和らいだ気持ちで過ごせるよう、民医連SWとしてできることを考え、寄り添う支援につなげていきたいと思います。
(民医連新聞 第1759号 2022年5月2日)
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