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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 リスクあぶり出す調査・研究から 実践へ コロナ禍の高齢組合員の運動・生活習慣の変化 東京保健生協

 新型コロナウイルス感染症(以下、COVID―19)のパンデミックによる外出自粛などの行動制限は、とりわけ高齢者の健康に大きな影響を与えています。東京保健生協では、その影響調査と対策をすすめています。第15回学術・運動交流集会での寺岡かおりさん(理学療法士)の報告です。

■専門性を生かし活動

 当生協では、2018年より組織部に専門職を配置することで、地域の保健予防活動をより専門的にすすめてきました。私は現場から組織部へと異動し、今年で5年目になり、他にも管理栄養士や薬剤師なども配置されています。
 コロナ禍前は高齢組合員を中心に、積極的な健康増進活動を展開していました。一時は活動をけん引する「フレイル予防リーダー」の組合員を約170人養成し、35のフレイル予防班、約300人の班員で予防活動を推進してきました。しかし、2020年初頭からのコロナ禍で、国や自治体から外出自粛要請が出され、共同組織の活動も大きく制限されました。

■想像を超える影響

 COVID―19の重症化リスクは高齢者ほど高く、感染対策や医療・ケアへのさまざまな提言が出されています。あわせて、外出自粛によるフレイル化や要介護予防への、適切な対応も求められています。外出自粛要請は、高齢者の活動量を低下させることがわかっていますが、健康行動や生活習慣におよぼす影響は未知数でした。そのため、本研究では「COVID―19に伴う外出自粛期間における組合員の運動および生活習慣の変化」に着目し、調査を行いました。
 調査期間は20年8~9月で、都内6協議会で自記入式質問用紙(無記名)を配布し、297人から回収。そのうち記載が不十分な物を除き、212人(平均年齢76・8歳、女性81・7%)の結果を分析しました。想起法により、自粛前(19年秋頃~20年1月頃)と自粛中(20年4~5月頃)の総運動時間、健康関連QOL、インターネット利用状況、要介護のリスク判定として使用される基本チェックリストにて、日常生活活動、運動器機能、低栄養、口腔(こうくう)機能、閉じこもり、認知機能、抑うつ傾向を調査しました。
 調査で運動班・介護予防教室に不参加の人の割合は約97%と、かなり制限されたことがわかりました(図1)。運動時間は1週間平均のストレッチ、筋トレ、バランス運動、ウオーキングのすべてで減少していました。全体的健康感、日常活動制限、体の痛みなど、いずれも有意に悪化していました。特に独居は非独居と比較して、全体的健康感がより大きく悪化しました。基本チェックリストの得点も全体的な悪化がみられました(図2)。
 自粛中、総運動時間が大きく減ったのは、参加できなくなった班活動や介護予防体操などで、ストレッチや筋トレが行われていたから、と考えられます。一方、個人でとりくめるバランス運動やウオーキングでの減少は軽微でした。

■課題はアウトリーチ

 これらの身体活動や生活習慣の制限は、今後高齢者のフレイル化や要介護化を招く可能性があり、専門職の積極的な介入が必要になります。対面の活動が難しい状況で、組合員とつながるオンラインの活用も望まれています。
 調査結果に危機感を覚えた当生協では、オンライン活用のとりくみを21年から本格的に開始。タブレット端末を組織部で購入し、フレイル予防動画の配信、オンライン保健講座、オンライン協議会、オンライン班会などを行っています。しかし、インターネットの利用状況は組合員や地域でも偏りがあり、活用できる人とできない人で二極化しています。1人で参加が難しい人には、他の組合員が援助して複数人で参加するなど、対策をすすめています。
 現在は体重や筋力の減少が顕著な組合員に、個別の栄養や筋トレの指導を行っています。今後は現在つながれていない地域の組合員に、体力チェックイベントなどをきっかけにした、アウトリーチを強めることが課題です。

(民医連新聞 第1757号 2022年4月4日)