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民医連新聞

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副作用モニター情報〈569〉 アセトアミノフェンで薬剤性肝障害を発生した事例

 アセトアミノフェンは、解熱・鎮痛剤として感冒症状やがん性疼痛(とうつう)などで広く使用される医薬品です。最大で1日4000mg服用することもあり、比較的安全な薬剤と認識されていると思います。代表的な副作用として肝障害が知られており、添付文書の警告欄には、「1日総量1500mgを超す高用量で長期投与する場合には、定期的に肝機能等を確認するなど慎重に投与すること」と記載されています。今回は、高用量に満たない投与量で服用したにもかかわらず、薬剤性肝障害(胆汁うっ滞型)が起きた事例が報告されたので紹介します。

症例)80代後半女性、歩行時、左臀部(でんぶ)に疼痛があり、カロナール錠200mgを1日2錠で服用開始。服用4日前に、肝機能が問題ないことを確認している。開始後19日目にAST32、ALT81、ALP2309、γ-GTP633と肝酵素が上昇し、3日後に中止。中止後9日目にAST33、ALT24、ALP1460、γ-GTP276と軽快した。過去にもカロナール錠服用中に同様の症状があった。

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 アセトアミノフェンは、発現が投与量と服用期間に依存しやすい、薬剤肝障害(中毒性)の代表例として有名です。過剰にアセトアミノフェンを服用した場合、主な代謝経路であるグルクロン酸抱合や硫酸抱合で処理できず、CYP2E1による代謝が増えます。その結果、代謝産物であるN-アセチルベンゾキノンイミン(NAPQI)が蓄積しやすくなります。NAPQIは、肝毒性があることが知られており、薬剤性肝障害を発症する原因と考えられています。
 今回の症例の場合、1日400mgで服用しており、一般的に高用量とはいえません。ただ高齢者は、硫酸抱合能やNAPQIを代謝するのに必要なグルタチオン合成能が低下しており、高用量で長期投与する場合以外でも肝障害が現れる可能性を考慮すべきです。また絶食、低栄養状態、摂食障害、慢性の飲酒などでは、食事で補えるグルタチオンの不足が起こりやすくなるので注意が必要です。
 過去に全日本民医連副作用モニターには、アセトアミノフェンによる薬剤性肝障害が23件報告されています。12件は1日の服用量が1500mg未満であり、そのうち6件は70歳以上の高齢者です。高齢者は食事量の低下から、グルタチオンが不足となっている場合も想定されます。その場合、薬剤性肝障害が起きるリスクを念頭において、肝機能を定期的にチェックしてください。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1754号 2022年2月21日)

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