みんなで実践 職員まもるヘルスケア 全日本民医連 職員健康管理委員会 (8)相手の立場に立って
長引く新型コロナウイルス感染症の影響で現場が疲弊するいま、職員のヘルスケアはとりわけ重要です。全国でとりくまれた実践を伝える連載第8回は、職場での面談についてです。
あなたが職場の健康相談の窓口担当者になると想像してみてください。「何をしたらいいかわからない」と困る人が多いのではないでしょうか? 法律や指針に相談窓口を設ける旨の記載はあっても、担当者がなにをすべきかまでは十分に記載されていません。
長時間労働者への医師の面接指導には、厚生労働省からチェックリストが示され、インターネットで調べると、さまざまなチェックリストを入手することができます。窓口担当者としては、このようなツールがあると安心です。しかし、チェックリスト通りに面談を行えば、すべてが事足りるのでしょうか? チェックリストを用いた面談では、「人の気持ち」というものがまったく無視されていることに注意が必要です。
私は産業医という仕事をしていますが、体調不良者が職場に発生した場合、まず湧き上がる心の動きは「心配だ。大丈夫だろうか?」というものです。そして実務的には「働けるだろうか?」という、就業の可否を判断することになります。
患者と医療従事者の関係では、共感が大事と強調されますが、職員同士を含むすべての人間関係で共感は大事です。共感が大事だからと考えて「つらいですね」と発する言葉と、心から共感して「つらいですね」と発する言葉には大きな差があります。一度相手の立場に立って、想像することが大切です。
メンタルヘルス(こころの健康)に関する面談をする機会が、この10年近くで増えていると思います。私は「どうしてうつ病が増えているのかは、厳密には解明されていないのが現状」と説明しています。新型コロナウイルス感染症の流行も、なぜ流行しているかは厳密にはわからないのが現状と考えます。未解明の分野では、積極的にさまざまな分析や研究が行われます。その内容を聞くとわかったような気がして、病気が完璧に治るように感じたり、内容が難しすぎて不安に感じたり、そもそも未解明の分野であるという前提を忘れたりします。
からだやこころが弱っている人は、頭がこんがらがった状態になっていることも多いです。面談では、面談対象者がどのように考えているか(医療でいうところの解釈モデル)を把握するように心がけましょう。(岡田崇顧、高知・医師)
(民医連新聞 第1753号 2022年2月7日)
- 記事関連ワード