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民医連新聞

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福祉灯油 今年こそ 冬季調査と署名を力に実現! 北海道・オホーツク勤医協

 極寒の地の長年の実態調査と要求運動から、暖房費を助成する「福祉灯油」制度が実現しています。「今年こそ」と署名を集めた北海道・オホーツク勤医協のとりくみを紹介します。(文・丸山いぶき)

 この冬、原油価格高騰で、寒冷地から例年にも増して悲鳴があがっています。北海道生協連の昨年12月の灯油定期配送価格は1リットル110~115円(税込)と、前年比35円の値上がりです。「ひと昔前に比べて倍」とオホーツク勤医協介護事業部長の鈴木英紀さん。「今日(1月20日)の最低気温? たしか、北見市はマイナス22・3度でした。肺がキュッとなる寒さ。午前10時半のいまもマイナス11度です」

■目標を超え2053筆

 同法人は昨年11月18日、福祉灯油の実現を求める署名2053筆を北見市副市長に提出し、低所得世帯に暖房費1万円の助成を実現させました。
 とりくみの基礎にあるのは、北海道民医連が2008年から道内各地で実施する冬季高齢者実態調査(以下、調査)です。北見市の調査結果も毎年県連に報告し、県連を通して、暖房費や食費などを節約して暮らす実態や、福祉灯油実施の必要性を訴えてきました。
 しかし、道内の実施自治体は、全179市町村のなかの57・5%でした(20年度)。「北見市にも近年は制度がなかった。法人社保委員会で地域を良くするための課題に位置づけ、『どう実現に近づける?』と話し合いました」と鈴木さん。
 「まずは調査結果を携え、直接自治体要請を」ととりくんだ20年度、課長級が対応した市側は「財源がない」の一点張り。実現かなわず、歯がゆい思いをしました。
 そこで今回は「署名1000筆を市長に直接届けること」を目標にとりくみを開始。介護事業所を含む法人内16のセクションが持ち回りで、北見病院の外来待合室で署名を呼びかけました。デイサービス利用者や連携事業所、取引業者にも声をかけ、友の会も送迎バスの待合室や機関紙の配達で呼びかけ。ひと月半で目標の倍の署名を集め、結果につなげました。

■生活保護世帯に拡大を

 一方、北見市の福祉灯油制度には課題も残っています。生活保護世帯は、冬季加算があることを理由に給付対象から外されました。
 陣野麻希さん(ケアマネジャー)は、今年の調査で生活保護を利用する63歳、独居の男性宅を訪問。普段の室温は13度、男性は糖尿病で右膝下を失っていますが、暖房費を捻出するために食費を削っています。冬季加算だけでは月々の暖房費に2万円近く足りない男性が、「5000円だけでいいから」と福祉灯油制度を切望します。「少額の助成でも救われるってことですよね。これくらい出してよ! 暖かいところで政治、行政をしている人こそ、この環境に身を置いてどれだけ苦しいか体験してほしい」と陣野さん。
 4月で入職3年目になる中島汐理さん(臨床検査技師)も、生活保護を利用する86歳、独居の女性宅を訪問しました。「署名にも協力してくれていたのに『なんで対象じゃないの?』と残念そうで申し訳なかった」と中島さん。

■目の前の課題に一歩ずつ

 「財源は“ない”のではなく、何を優先するか。いのちがけで切り詰める人に使う以外に、何を優先するのか」と鈴木さん。陣野さんや中島さんも加わる社保委員会で「今後もその都度、話し合い運動をすすめたい」と話します。
 地域の要求に根ざした今回の署名は「全然断られなかった」との声も。「『俺も書くよ!』と若い人が言ってくれてうれしかった」と中島さん。「検査科の私も患者さんの声に勇気をもらった。行動すれば声は届くし、今年がダメでも来年へのステップになります」


原油高騰 各地で自治体要請

 北海道では各地の社保協を中心に昨年秋から要請行動を強め、函館市や釧路市、旭川市などでも福祉灯油が復活しました。さらに、唯一実施を決めていない札幌市での実施や、市町村の制度の対象や金額の拡充を要請しています。岩手県や鳥取県も、実施を決めています。

(民医連新聞 第1753号 2022年2月7日)