フォーカス 私たちの実践 外来看護の職場づくり 山形・鶴岡協立リハビリテーション病院 SDHの視点で連携見えなかった事実が明確に
第15回学術・運動交流集会で、健康権が保障され、住み慣れた地域で安心して暮らし続ける支援のため、在宅療養をささえるチームの一員として、「患者を捉える視点」「事実を捉える視点」を持ち、連携のかなめとなる外来看護スタッフ育成と職場づくりのとりくみが報告されました。山形・鶴岡協立リハビリテーション病院の梅津恵さん(看護師)の報告です。
■「目とかまえ」の育成
外来看護の重点課題として、第一段階の2019年はSDHの理解を深める仕組みの構築、2020年以降はSDH視点での医療活動展開と外来看護機能の拡大を重視したとりくみをすすめました。
具体策は、(1)SDHの視点を取り入れた問診票の利用拡大、(2)気になる患者カンファレンスの充実、(3)家庭訪問、担当者会議への参加、(4)地域への積極的な情報発信と連携強化、(5)独居・未来院患者のフォロー体制構築です。
気になる患者カンファレンスは、事例の状況に合わせ、その都度参加職種を調整。多角的な視点が加わり、見えなかった事実や課題が明確化され、より具体的な支援に進展しました。患者の生活を見据えた上で必要な機関や地域との連携調整も可能になりました。
カンファレンスだけでは事実がつかみきれない場合は家庭訪問を実施し、生活状況の把握を行っています。家庭訪問の必要性を自分たちで判断し、どんな情報が必要かを考えることで、事実をみる「目とかまえ」が養われます。また退院後、医学管理となる患者を対象に担当者会議への参加も実施しています。事前に情報共有することで、退院後の初回診察時のスムーズな対応に繋がっていると感じます。
■喜びや働きがいにつながる
外来だけではフォローが困難な場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターなど関係機関に情報提供し、地域での見守りやカンファレンスへの参加を依頼しています。特に在宅医療・介護連携情報共有システム(Net4U)を活用したタイムリーな情報共有は、地域のさまざまな関係機関との連携強化に繋がっています。
独居・未来院患者のフォロー体制構築では、独居患者のリストアップと電話訪問、患者周囲を取り巻くコミュニティー関係を可視化した情報共有を開始しました。
2019年とりくみ実施後の意識調査では、「SDHの視点を意識することで、患者の状況がより鮮明になった」「早期の段階で多職種と連携をとり情報共有することで、見えなかった事実が明確となり視野がひろがった」との感想が出されました。2020年の意識調査では、「人は成長する存在であることを前提に患者を捉えるようになった」「チームのとりくみに継続する力が加わり、外来から地域へ発展した支援が形になった」「多職種で患者を捉える視点を重ね、調和・連携するようになった」との感想が出され、民医連看護の実践者としての成長がうかがえました。何よりこのとりくみ自体が「喜びや働きがいになっている」という意見にうれしさを感じています。
スタッフの成長プロセスとして(図)、普段の気づき発信がカンファレンスに繋がり、多職種の視点で多角的討議のなかで「個人の固定概念や偏見、個人の問題」から、「生活している社会を取り巻く環境」へ患者の見方が変わりました。さらに地域に足を運び、見えなかった事実をみる「目とかまえ」を学び、ゆるぎない患者観「その人らしさを追求した支援の提供」につながりました。このサイクルを回すことで外来看護師の役割がより明確化され、モチベーション向上にもつながりました。
■民医連看護の実践者として
スタッフが日常的に民医連綱領と憲法を意識し、地域のなかで自施設の存在意義、独自性に確信を持つことは重要です。綱領にもとづき、民医連看護の実践者として成長する姿に「医療・介護活動の2つの柱」の実践を確信しています。管理者一人で職場を変えることは困難です。ベテランや中堅の力をしっかり組織しながら「経験から学ぶ力」を身につける仕組み・援助のあり方を構築し、学びあい・成長しあえる職場づくりを課題に今後も看護活動にとりくんでいきます。
(民医連新聞 第1750号 2021年12月6日・20日)