みんなで実践 職員まもるヘルスケア 全日本民医連 職員健康管理委員会 (7)保健・医療全体の観点を
長引く新型コロナウイルス感染症の影響で現場が疲弊する中、職員のヘルスケアはますます重要です。全国でとりくまれた実践を伝える、連載第7回は、保健所や公的機関でのヘルスケアです。
新型コロナウイルス感染症の流行で、私たちも大きなストレスにさらされています。心の余裕がなくなり、イライラすることが増え、自分たちのことで精いっぱいかもしれません。しかし、外を見ると、自分たち以外にも、過酷な状況に置かれている人たちがいることが見えるはずです。
私は、公的機関の産業医もしています。毎月、安全衛生委員会の出席と職場巡視がルーティンで、産業医面談は時々しかありませんでした。ところが、今年に入って、これまでにはなかった、長時間残業者の面談が続くようになりました。長時間残業者の面談とは、残業時間が過労死認定基準の月80時間を超えた職員の面談です。第3波の時、保健所に出向した保健センターの課長を最初に、毎月保健センターの職員の面談をするようになりました。課長によると、出向中は夜中まで疫学調査の書類を書いていたそうです。それでも、出向者はその日のうちに帰ることができていたようですが、保健所職員は「終電に乗れるとラッキー」というほどだったそうです。
その後も第4波やワクチン集団接種、第5波とつづき、保健センターの職員の業務量も激増。保健師だけでなく事務職員の面談も増えてきました。多い月は5人の長時間残業者面談があり、それだけ過労死認定基準超えの職員が多いという状況なのです。保健所や保健センターの職員の誰かが過労死しても、全然おかしくないのです。
疫学調査自体が、保健所職員の長時間労働の主な原因になっているため、今年になってから、疫学調査を簡易にする改革がすすめられました。そして、8月ごろからは、感染者の家族・同居人に対して、PCR検査を指示しなくなりました。PCR検査で感染者と判定されると、疫学調査や毎日の体調確認の必要があります。しかし、検査をせずに濃厚接触者のままだと、何かあったら電話するように指示するだけで良いからです。保健所業務の放棄とも言えますが、こうでもしなければ、保健所・保健センター職員の過重労働はなくなりませんし、放棄しても、過労死認定基準超えの職員はなくなっていません。
私たちは、保健・医療全体として、このコロナ禍をどう乗り切るかという観点で考える必要があると思います。(大阪・医師)
(民医連新聞 第1748号 2021年11月1日)
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