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民医連新聞

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相談室日誌 連載507 家族の突然の発病、入院、入所 垣根にとらわれない支援とは(東京)

 Aさんは脳梗塞を発症、重度の障害がある状態で当院の回復期病棟に入院。娘と高校生の孫娘と昔ながらの一軒家で同居していました。芸能関係の仕事をしていた娘は、新型コロナウイルス感染症の影響で仕事がなくなり、Aさんの年金とひとり親手当のみで生活をしていました。入院当初は娘に就労意欲があったため、収入が安定するまでの間は無料低額診療事業を利用し、生活保護申請はしませんでした。
 今後について病状説明をした際、自宅は療養ができない家屋状況だったため、施設入所の方向になりました。娘は持病の喘息(ぜんそく)が悪化し、一度も就労できず、Aさんの施設の費用を払うと家族の生活が困窮する経済状況。この段階で生活保護の利用を相談し、現物支給での受給が決定しました。
 その直後から、娘と音信不通になりました。連絡先がわかる親族に全員連絡したり、病棟師長とSWで自宅訪問したりもしましたが、塀があり玄関ドアを直接たたくこともできず、家族の安否すらわかりませんでした。最終的には「かかわりたくない」と言っていた息子が手続きをして、Aさんは特養に入所となりました。
 後日、退院の付き添いの際、娘は「どうしたらいいかわからなかったんです」と話していました。「相談をするよりも、“自分で何とかしなきゃ”という思いが強く、その思いが強くなればなるほど体調が悪くなっていく、という悪循環になっている」と話してくれました。
 元気だった家族が突然発病、入院し、今まで対応したことのないことをしなければならなくなることは、Aさんの家族だけではないと思います。
 SWとしての支援は、Aさんの退院でいったん終了となり、娘との接点が切れてしまいます。
 高齢者でも障害者でも児童でもないAさんの家族をささえる、公的な支援者が少ないと感じました。Aさん家族は一見課題のない家庭のようにみえますが、ひとり親、低所得、就労困難な身体・生活状況、孫娘の進学就労の問題など課題が多く、複雑に絡み合っています。高齢・障害・児童などの垣根にとらわれない支援ができる窓口があるとよいと思いました。

(民医連新聞 第1747号 2021年10月18日)