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民医連新聞

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相談室日誌 連載506 「自立」支援に必要なもの 障害や疾病も鑑みて考える(神奈川)

 Aさんは他県で生活保護を数年利用しましたが、近隣トラブルによりホームレスに。単発で仕事をするも、継続できずその日暮らしの生活を送っていました。ある日頭部を打撲して受診、お金がなくその後抜糸ができないと当院へ受診しました。
 受診費は緊急患者に対する一時保護で対応しましたが、問題は今後の生活。生活保護を利用しながら、就労含め生活全体を立て直していくことを提案しましたが、Aさんは「生活保護申請の際、自立支援施設への入所を勧められる。入所した経験から周囲と上手くできない。仕事も相談しているので自分でがんばってみたい」と。
 数カ月後「お金が入ると浪費して結局ひどい生活となった。役所で、自立支援施設を紹介され躊躇(ちゅうちょ)している、相談したい」と連絡があるも、約束の時間にAさんは来ません。連絡すると「ある施設に入居と生活保護申請を勧められ、お世話になることにした」と。数日後、「貧困ビジネスかも。薄い折り畳みベッドで寝かされ、いじめにあう」と訴えがありました。役所に連絡を取り、現状の生活に対する不安や周囲と以前から上手くできない悩みを抱えていることなどを伝え、今後の生活、精神面の医療支援や自立への支援を相談しました。
 1カ月後「心療内科に受診ができ『発達障害疑い。環境への適応能力が悪く、高次脳機能障害(幼少期の事故が原因か)の可能性あり』と言われた。自分が上手くやれない原因がわかってよかった。一人暮らし、就労をめざしがんばっていきたい」と。その後Aさんから連絡はありません。
 ホームレスになる人の6割が知的障害や精神障害を抱えているといいます。社会で上手くやれない理由には障害が隠れている可能性もあります。しかし、生活保護申請時、まずは生活能力などを確認するために自立支援施設を勧められることも多く、申請を躊躇する人も。施設に入り、「がんばれ」「我慢しろ」では自立には繋がりません。自立するために何が必要なのか、必要な環境や支援は何なのか、障害や疾病も鑑みて考えていくことが必要だと思います。
 制度の運用においてそれが通例になっていることであっても、疑問を持てる支援者でありたいと思います。

(民医連新聞 第1746号 2021年10月4日)