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民医連新聞

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副作用モニター情報〈562〉 タムスロシン服用患者の白内障手術における術中虹彩緊張低下症候群

症例)80代男性 前立腺肥大症でタムスロシン錠を服用中の患者。白内障の手術を受けることになったが、通常30分程度で終わる手術が1時間半もかかった。術中に進行性の縮瞳と思われる症状があったことが原因と考えられる。これは手術中に術中虹彩緊張低下症候群(以下、IFIS)が起こった可能性が考えられる。

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 IFISは白内障手術中に「水流による虹彩のうねり」「虹彩の脱出・嵌頓(かんとん)」「進行性の縮瞳」の3徴候を生じる病態です。これにより手術の進行が妨げられたり、術後の合併症を起こしたりすることがあります。IFISの発生頻度は、白内障手術の約2%程度で起こるといわれていますが、α1A受容体選択性遮断(しゃだん)薬を服用している患者では、40~60%の高頻度で発生すると報告されています。虹彩散大筋にα1A受容体が分布していることが一因といわれています。α1A受容体選択性遮断薬は主に前立腺肥大症の排尿障害改善薬があります。タムスロシンやナフトピジル、シロドシンなどがありますが、その中でも特にタムスロシンは他の薬品に比べ、IFISの発生頻度が高いと報告があるので注意が必要です。
 なお、α1A受容体選択性遮断薬を休薬して1年以上が経過してもIFISが発生したという症例があります。つまり、予防として手術前に薬をやめたとしても、手術への影響がなくなるとはいえません。IFISへの対策としては、内服の中止という方法ではなく、事前に医師や医療機関に対して薬を服用している旨を伝えておくことが大切で、術中の病変に対して前もって準備してもらうことが大事になってきます。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1746号 2021年10月4日)

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