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民医連新聞

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診察室から 雨の日には雨の中を

 もう1年半以上、スマートフォンを開けば新型コロナの感染者数に、気持ちがざわつく自粛生活が続いています。以前は県外の学会出張先で気の知れた仲間と飲みながら、楽しい会話をするのが、私にとっては貴重な時間でした。
 ハーバード大学の研究で「良い人生は良い人間関係で築かれる」という興味深い報告があります。「人間関係がうまくいかない理由には人が手っ取り早い解決策を好むのに対し、その関係は手のかかる複雑なものだから」とありました。三浦綾子の小説『氷点』の一節で、陽子の父親が「ものにも手をかけてやらないと愛情は育たないよ」と彼女に言います。いま私たちは大切な人間関係にさえ、手をかけていないのではないか。
 相田みつをの詩に「雨の日には雨の中を 風の日には風の中を」という言葉があります。「晴れていなくても状況に応じて抗(あらが)うことなくすすんでいこうよ」と言ってくれているように思います。「コロナ禍の日々にはコロナ禍の中を」私も抗うことなく前にすすもう。
 まずは、WEB飲み会なるものを始めてみました。わざわざWEBで? その通りです。ただ画面の前に集まるだけでは面白くないので同じ酒とつまみを全員分購入し、各自が自宅に持ち帰ります。画面に向かって同じ酒を飲み、食べる、まったくもって面倒なWEB飲み会です。心理学では、人は自分が費やした行動を正当化するそうです。つまり、手間をかけた分、自分にとってそれだけ価値がある飲み会と脳が錯覚します。
 同じ酒だから、画面のなかで互いにお酌をする疑似体験もできます。もちろん、相手に注がれる動作をされても自分の手酌ですが、そこがバカバカしく、酔っ払いにはとても楽しく感じます。一番良いのは、マスクを外した笑顔が見られることでした。そんな飲み会は盛り上がり3時間以上も続き、飲みすぎて終了しました。
 バカバカしいことからでも、コロナ禍の日々にはコロナ禍の中を、笑顔で歩いていきたいと思います。(石部洋一、岡山・水島協同病院)

(民医連新聞 第1746号 2021年10月4日)

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