平和の誓いひろげよう 来春 東京発の憲法九条の碑誕生
戦争しない、武力を持たないと定めた日本国憲法第九条。この九条を刻んだ碑が東京に誕生します。「『九条の碑』を建立する会」の事務局・中田順子さんと、建立する会の共同代表の1人・石川晋介さん(みさと健和病院・院長補佐)に話を聞きました。(多田重正記者)
きっかけは、千住(せんじゅ)九条の会が主催した講演会でした。千住九条の会は、東京都足立区の千住地域を中心に「憲法九条を守り生かそう」と活動している会で、2016年に発足しました。
千住九条の会は昨年1月、国際ジャーナリストの伊藤千尋さんを招き、講演会を開催。その講演で伊藤さんは、スペイン自治領のカナリア諸島など国外に九条の碑があること、そして日本国内にも多くの九条の碑があることを紹介しました(今年9月現在、国内23カ所)。しかし、首都である東京にはまだ碑がありませんでした。
「だったら足立区に東京初の九条の碑を建立しよう」と、千住九条の会の世話人会で相談。同年11月、区内の人びとに声をかけ「『九条の碑』を建立する会」を発足させました。
碑の建立実現に向け民医連内でも重ねて訴え
民医連職員も建立する会に多数加わっています。昨年3月まで柳原病院(足立区)の院長をつとめていた石川さんもその1人。千住九条の会の要請を受けて建立する会の共同代表となり、尽力してきました。
石川さんは、千住九条の会の発足当時からの呼びかけ人でもあります。2015年に自公などの強行採決で安全保障法制(戦争法。自衛隊が海外で武力行使できるようにした法律)が成立。憲法を守り戦争する国への歩みを止めたいとの思いで同会に加わりました。
「東都保健医療福祉協議会(※)のなかには、千住九条の会の会員がたくさんいるんですよ」と石川さん。九条の会の「群読」にも精力的にとりくんできました。「みんなで憲法の前文や九条を声に出して読むと、憲法の歴史や素晴らしさを感じることができる。看護師やケアワーカーも群読に参加しています」。
石川さんは、東都協議会のなかでも碑の建立に向けた支援を重ねて訴えてきました。
「若い人や子どもにも注目してもらえるように」
「建立する会」は、碑の建立を通じて、「日本国憲法を生かし活用する議論」をひろげることや、日本国憲法、特に前文・憲法九条にふれ、その精神を学ぶことなどを目的に掲げています。
それだけに「ありふれた『石碑』にしたくなかった」と中田さん。「若い人や子どもにも注目してもらえるようにしてほしい」と建築家にデザインを依頼。球状で、のぞきこんだ人の姿も映りこんで、生きている意味や平和について思いをはせることができるようなデザイン(同会FacebookやYouTubeで公開)に決定しました。
碑は来春の完成をめざしています。柳原リハビリテーション病院の隣接地(健和会が所有)につくられる予定です。
憲法九条の思想を次世代へ
建立する会は、今年7月末に「九条の碑」記者会見、制作発表を行いました。直後から「新聞で見た。カンパしたい」「素晴らしい運動に賛同します」などの声が、建立する会の事務局にあいつぎました。
建立する会は、インターネットを使った募金(クラウドファンディング)にもとりくみ、8月末、目標額の300万円を達成。
しかし碑のデザインが特殊なことや附帯工事費、碑の建立成功に向けた活動のため、まだ資金が必要。「九条は二度と戦争しないと誓った世界の宝。九条を守り生かし、目に見える形にして市民にアピールし、幅広い人に親しんでもらえる碑を完成させたい」と中田さん。
石川さんは「憲法九条には、平和運動の歴史や非戦の思想が凝縮されている。碑を単なるモニュメントではなく、平和実現に向けたひとつの道しるべにしたい。憲法九条を先人から受け継いで理解し、次の世代にひきつぐために、自分たちができるところで声を上げていく。そのことが大きな力になる」と力を込めました。
※東京民医連の東部地域で医療福祉事業に携わるグループ。柳原病院や同病院を運営する健和会も参加。
■建立支援カンパ振込先■
《ゆうちょ銀行》口座名義「九条の碑」を建立する会
【ゆうちょ銀行から】記号11330
番号01391361
【他行から】店名一三八 店番138
普通預金・口座番号0139136
(1万円以上の寄付で敷地内に記名)
(民医連新聞 第1746号 2021年10月4日)