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民医連新聞

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あれから10年 私の3.11 ⑮地区丸ごと葬り去ることは許せない! 津島原発訴訟を支える会共同代表 福島・郡山医療生協三穂田支部長 吉川 一男

 東京電力福島第一原発事故で、私の晩年のライフスタイルが一変しました。事故避難区域からの避難者支援にかかわるなかで、避難者のみなさんの「すみません、ありがとうございます」との態度に接し、避難者が自らの苦しみや悩み、怒りなどを発言できない、萎縮した受け身の状況にあることを知り、「周りの者たちが避難者の思いを発信できる環境をつくらなければ」と実感しました。
 浪江町津島地区は、太平洋沿岸部の福島県浪江町中心部から約30km北西部に位置する400世帯・人口1400人ほどの山間部で、長い歴史のなかで育まれてきた「地域全体が大きな家族(法廷での女性原告の証言)」のような地域です。原発事故当時、浪江町中心部から約8000人の町民が津島地区に避難してきました。津島住民たちは、この避難者たちに対し、食事や寝泊りなど昼夜にわたり献身的な支援を行いました。しかし、津島地区は当時極めて高い放射線量汚染区域だったにもかかわらず、国などから情報は示されず、数日間放置されました。そして、現在も高線量が続いており帰還の見通しは立っていません。
 いま、津島地区住民は丸ごと切り捨て葬り去られようとしています。国策による棄民策は許せません。津島住民のたたかいは、国・東電との最先端の原点的なたたかいです。
 6年前、津島の人たちから「元の平穏なふるさとを取り戻すため裁判を起こしたい」との相談を受け、「津島原発訴訟を支える会」結成を呼びかけました。現在の会員数は170人になり、地裁判決に向けて、県内外への公正判決要請署名の集約活動や、裁判傍聴・デモ行進などにとりくんできました。裁判所へは約9万筆の署名を提出することができ、去る7月30日には国と東電の責任を明確に断罪する判決を勝ち取ることができました。しかし、残念ながら津島のみなさんの「除染して元の平穏な暮らしができるように」との原状回復請求は棄却されました。
 現在、原告、被告(国・東電)双方が控訴し、法廷でのたたかいは仙台高裁に移りました。津島地区の原状回復を勝ち取るために、ひきつづき力を注ぐ決意を固めているところです。

(民医連新聞 第1746号 2021年10月4日)