コロナ禍を乗り越え 人権と平和 かがやく日本へ
第44期第3会評議員会開く
全日本民医連は8月21~22日、第44期第3回評議員会をオンラインで開催し、評議員84人(予備評議員含む)と四役理事、会計監査、傍聴者など総計176人が参加しました。コロナ禍でさまざまな困難に立ち向かった1年半をふり返り、半年後の第45回総会に向けて、議論しました。(稲原真一記者)
平田理副会長が開会あいさつ。「コロナ禍で明らかになった社会の矛盾や、民医連内外の課題に向きあい、第45期運動方針に直結する議論を」と呼びかけました。
沖縄県から、来年1月に行われる名護市長選挙の予定候補者、岸本洋平さんが連帯のあいさつ。「社会保障の充実は基地関連の補助金がなくても可能。住民の意思を無視した辺野古沖新基地建設は絶対に受け入れられない」と訴え、全国への支援を求めました。
増田剛会長はあいさつで、「新型コロナウイルス感染症への対応など、民医連組織が大奮闘した半年間だった」と第2回評議員会からの半年を評価しました。コロナ感染者への対応で、基本を入院から自宅療養とする方針転換による大混乱、東京オリンピック・パラリンピックの強行による国民への誤ったメッセージなど、この間の政府の対応を批判。コロナ禍の先にめざす社会像の探求と、さしせまった総選挙で、人権が保障される平和な日本をつくる大奮闘を呼びかけました。
岸本啓介事務局長が理事会報告。現状を感染爆発と政府の無策による、過去最大の危機と指摘しました。全国での豪雨や台風による被害に触れ、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)がはじめて「地球温暖化は人間の活動が原因」と認めたことを紹介。気候危機対策と脱炭素社会をめざすことを提起しました。菅首相が被爆者の願いに背を向け、太平洋戦争でのアジア2000万人の被害に一言も触れず、沖縄の声を無視して辺野古の新基地建設を強行していることなどを指摘。旧優生保護法違憲訴訟の判決は、違憲性を認めながら国賠請求権は認めない内容で、ひきつづき支援をしていくことを確認しました。高齢者や学生の孤立、女性の貧困などが深刻化するなか、人権のアンテナを高くし、活動する必要性を訴えました。コロナ後を見据えた経営課題の前進、医師・後継者養成の課題も、県連・地協に結集してとりくむことを提起しました。総選挙に向けて、民医連の要求を5つにまとめたことを報告。「コロナ禍で新たに出会った地域の仲間と手を結び、同じ要求でつながって希望をつくり出そう」と呼びかけました。
■全体討議
全体討議では、文書発言7本を含む39本の発言がありました。
鳥取の皆木真一評議員は、生活保護利用者がフードバンクを利用して受け取った物資を、鳥取市が収入認定して保護費から差し引いている事実を確認し、抗議と改善を求め運動中と発言しました。
埼玉の宮岡啓介評議員は、保健所のフォローが追いつかない自宅療養者に、オンライン診療で対応。経験をもとに地元医師会や保健所、行政も交えて現状を共有し、改善したと発言しました。
栃木の関口真紀評議員は、オンラインを利用した奨学生活動の継続や関係構築、民医連医療の実践を通して共感した医師が、仲間として合流した経験などを発言しました。
1日目の最後は、茨城大学人文社会科学部教授の清山玲さんが講演しました。
■分散会討議
2日目は10グループに分かれて討議を行い、各地の参加者から率直な意見が出ました。
コロナ禍では地域の医療機関や他団体、行政との共同を広げる必要性や、本当に困難な人につながるアウトリーチの工夫、職員のメンタルヘルスが重要との発言が。対面学習が困難になるなか、後継者対策や人づくりへの課題も多く出されました。ポストコロナを見据えた経営課題や、地域での立ち位置を全職員で共有することも重要と発言がありました。
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討議の後、次期理事会選考基本方針、2021年度上半期決算・会計監査、第3回評議員会方針を全会一致で決定しました。
根岸京田副会長が閉会あいさつ。「各地の発言や分散会討議で、元気になる評議員会だったと思います。秋にある総選挙で、政治を市民の手に取り戻し、来年は全国から喜びの声が集まる総会を期待したい」と結びました。
評議員会の発言から 困難に立ち向かう民医連の実践
止まらない感染拡大と職員の奮闘
沖縄・座波政美評議員は、人口10万人あたりの新型コロナウイルス新規感染者数で全国最多となった沖縄県で、沖縄協同病院が県の要請にこたえて病棟をひとつコロナ専用病棟に転換したことを報告。中部協同病院も連日100件を超える発熱外来・PCR検査を実施しています。
また、中学校を会場に食料支援にとりくんだところ、コロナ禍で失業したひとり親家庭の父親から「これで子どもに食べさせられる」と感謝の電話がかかってきたことを紹介しました。
座波さんは、来年1月に実施される名護市長選挙にもふれ、辺野古新基地建設に反対の立場で立候補を表明している岸本洋平さんを支援し「平和の波を沖縄から全国に広げたい」と語りました。
東京・加藤亥威(よりい)評議員は健生会のコロナ対応を報告。立川相互病院では8月に入り、コロナ病床を40床に拡大。事務職員も感染患者のための買い出しを手伝い、直接新型コロナウイルス感染症の診療を行わない医師も、ワクチン接種や術前PCR検査に入り「まさに総力戦」と加藤さん。
加藤さんは医療崩壊の現実を語り、「救急車の応受率が20%」で、「70件受けて240件断らざるを得なかった」週があったことを報告。政府や国に、コロナ対応に最大限注力する施策を出させるべきだと語り、治療と政治を動かすことの両方でがんばりぬく必要性を強調して、「民医連の底力をしめすときだ」と話しました。
神奈川・八木美智子評議員は、コロナ禍の困難事例を紹介。新型コロナ陽性になった40代男性の妹から「母親が熱を出した。骨折して歩けない。新型コロナウイルスの検査も受けられない」と電話があり、往診したところ、一間のアパートに親子4人が生活していました。陽性者と家族を隔てていたのはブルーシート1枚だけ。家庭内の濃厚接触が避けられない住環境で、検査した結果、母親は陽性でした。
コロナへの積極的対応 「行き場をなくす人出ないように」
「コロナ禍での『ピンチをチャンスに!』」と題して発言したのは岡山・栗林悟評議員です。岡山医療生協は「COVID19対応基本方針」を作成、コロナの感染拡大を受け、県内の民間医療機関としてはいち早く帰国者接触外来を開設。コロナ病棟の開設に向け、看護師全員にアンケートを取ったところ、50人以上が勤務してもよいと回答したことなどを紹介しました。「発熱を理由に行き場をなくす人が出ないように」とりくみ、コロナへの積極的対応で、2020年度は第1四半期の大幅な患者減・赤字を克服し、年度末(3月)には事業収益、患者数ともに前年実績を上回るまで回復したと語りました。
山梨・清水季世子評議員は、やまなし勤労者福祉会の実践を報告。コロナ禍で入院患者の面会も制限されるなか、最期を在宅で過ごす選択をした利用者・家族が多数いました。同法人は「コロナ禍でも最期を豊かに穏やかに迎えられるように」とりくみ、「コロナ禍での消極的選択が、家で看取れてよかったという積極的選択に変わっていった」と清水さん。訪問看護、看護小規模多機能、居宅介護、デイサービスなどの利用者も増やし経営も改善しました。
「一人で悩まないで」 不安にこたえて
京都・河本一成評議員は、県連として実施した「いのちの相談所」フリーダイヤル活動について報告しました。ポスターを600枚作成して張り出し、ラジオ広告も行い、「一人で悩まないで」と訴えました。
フリーダイヤルには今年1~7月、53件の相談がありました。ダイヤルを知ったきっかけはラジオ40%、ポスター23%、ホームページや口コミが38%でした。「孤独からくると思われる精神的な訴えがもっとも多かった」と河本さん。コロナ禍が続くことの不安、補償制度やワクチンのことがわからない、話し相手がほしい、などの声が寄せられました。
情勢を切りひらくとりくみ
情勢を切りひらくとりくみも各地から。
福岡・靏内由紀子評議員は「特養あずみの里」裁判で被告とされた看護職員の無罪を勝ち取るための署名運動で、民医連外に呼びかけてつながった医療機関・介護事業所に対し「STOP!介護崩壊」署名や75歳以上の医療費窓口負担2割化反対署名などの協力を要請した活動を紹介しました。
福島・北條徹評議員は、東京電力福島第一原発構内に原発事故後たまり続けている汚染水を多核種除去設備(ALPS)で「処理した」とされているALPS処理水について、政府が放出する方針を決めたことに異をとなえる立場で発言。「事故由来の汚染水を流す前例はない。原発ゼロをめざして奮闘する」と力を込めました。
千葉・伊藤美砂子評議員は、自衛隊木更津駐屯地のオスプレイ配備問題について発言しました。同駐屯地を拠点に、茨城の百里基地や静岡の東富士演習場への飛行訓練が行われることや、日米合同演習にも同駐屯地のオスプレイが参加することがわかっています。千葉民医連は「オスプレイはいらない」千葉県署名推進委員会の一員として7月、配備撤回を求める署名1万1805筆を国会に届けました。
大阪・坂田進評議員は、府が西淀病院の医師初期研修の定数を2から1に減らすと通知したことに抗議し、「初期研修医が2人いるからこそ切磋琢磨が可能」と訴え、県連として対応した経験を報告しました。
厚生労働省に緊急要望書を提出。地域の医師確保などについて話しあう府医療対策協議会の委員、府内の定数2の病院、大学病院、地域の医師会とも「電話懇談」を行い、定数を守りきることができました。
全職員の参加で経営改善
長野・近藤友子評議員は、2019年に経営破たんに陥った、東信医療生協の再建に向けた看護実践を報告しました。予算達成の努力を続けるなか、看護スタッフの半分が支援者や経験の浅い職員というなかで、患者の情報共有ができていない問題が浮き彫りになりました。
師長主任会議で「患者のために何ができるか?」と討議し、外来カンファレンスを再開。開催時間も固定して定例化しました。近藤さんは「パート医師も参加し、違った視点で助言をもらうなど貴重な時間となっている」と語りました。
北海道・小市健一評議員は、今年6月に確定した、北海道民医連の2020年代前半期・中長期計画について発言しました。
同県連は1978年の結成以降、友の会とともに道民の医療福祉要求にこたえ、全道6圏域に無差別・平等の医療・介護事業を展開しましたが、2000年代に入り、医師体制の困難などから、中長期計画の策定が難しくなりました。
2020年代前半期・中長期計画では「2000~2010年代の実践と到達を総括し、経営困難を直視し、全職員参加による持続可能な医療・介護経営構造の構築と、新しい時代における医師の確保と養成、医師不足の打開に向けた医師政策を一体的に強調している」と小市さんは話しました。
宮城・宮沼弘明評議員は宮城厚生福祉会の経営改善について発言しました。同法人は2018~2019年度、2期連続で大幅な赤字になりました。県連として支援し事務幹部を配置。法人外から介護・看護職員も配置して事業の稼働率をあげ、経営と管理運営の改善を一体にとりくんだ結果、赤字予算だった2020年度に黒字を達成しました。
身近な事例も飛び出し 盛り上がった人権café
大阪・内田寛評議員は、淀川勤労者厚生協会における人権caféのとりくみを報告しました。同法人は、月1回以上をめどに、WEBなどを使った学習企画を実施。人権caféの読みあわせも積極的にすすめ、ある事業所では「子どもの人権」(vol.1)を読みあわせた際、「ブラック校則」問題で盛り上がり、息子の髪型について学校から電話が来た職員が「ツーブロックがなぜダメなのですか」「華美だと言いますが、先生は華美だと思いますか」「子どもに納得のいく説明を」と話した事例を紹介、参加者から拍手が。内田さんは「コロナ禍、厳しい時だからこそ『人権café』を積極的にとりくみ、現場から人権を発信したい」と話しました。
広島・佐々木敏哉評議員は、「人権学習とジェンダー課題について」発言しました。コロナ禍でジェンダー格差が浮き彫りになっていることにふれ、まちづくりでも職場づくりでも幹部や男性の意識変革が求められると強調。全日本民医連や県連の理事会構成でも「女性を増やす努力が必要」と語りました。
(民医連新聞 第1744号 2021年9月6日)