民医連奨学生に聞く! リスク管理のキーパーソン高齢者、 患者に寄り添う薬剤師に 宮城民医連 星山愛さん(4年生)
なぜ民医連の奨学生になったのか―。今回から、全国の薬学奨学生に聞きます。1回目は、宮城で学ぶ星山愛さんです。(長野典右記者)
星山さんは、もともと看護師をめざしていました。しかし、祖母が漢方薬の生薬を日常生活の中で飲んでいて薬効があることを聞き、薬はなぜ疾病に効くのかなど薬に興味がわき、薬剤師をめざすことになりました。
民医連との出会いは、高校生3年生の時の一日薬剤師体験。奨学金の制度もあると聞き、奨学生になりました。
■コミュニケーション能力
奨学生になって、病院薬剤師の体験や、大学の授業などから、在宅訪問での服薬指導についても学びました。
患者宅に多くの残薬あり、薬の飲み忘れがないように服薬カレンダーなどを利用することも大切ですが、患者の生活や働く環境、症状にもあわせ、1日に飲む薬の量を変えることなどの重要性を感じました。そのためには、「患者さんとコミュニケーションができる能力のスキルアップをしたい」と語ります。高齢者の健康状態をつかみ、患者に寄り添える薬剤師になるために、将来は、認定薬剤師、専門薬剤師の資格も取っていきたいと抱負をのべました。
■コロナ禍でもつながる
現在、県連の奨学生活動は、コロナ禍で活動が制限されていますが、奨学生同士、オンラインで定期的に連絡を取りあっています。大学授業の内容や試験の情報交換などを行い、国家試験に向けて励ましあっています。
現役の薬剤師との交流は、「薬学生が実務実習を開始する前に技能、態度が一定の基準に到達しているかを客観的に評価する試験OSCE(客観的臨床能力試験)にも有効な活動」と言います。
■ハンセン病の差別学ぶ
北海道・東北地協の夏のつどいでは、実行委員としてかかわりました。2019年に青森のハンセン病療養所である国立療養所松丘保養園のフィールドワークに出かけました。らい予防法のもと、強制隔離され、自分の故郷に戻れず、今も社会から距離を置き、生活をおくる入所者から、その苦難の歴史と差別と偏見の実態を学びました。想像を絶する話に大きなショックを感じました。
差別と偏見は新型コロナウイルス感染症に感染した医療従事者や患者にも向けられ、今もこの社会に根強く残っていることを痛感しました。星山さんは「医療に携わる専門家として、ワクチン接種など医学的に正しい知識を普及する意義を感じました」と言います。
また東日本大震災で起きた原発事故被災後の福島や、宮城で津波の被害のあった地域にもフィールドワークとして足を運び、現地の現状を学びました。
震災時、避難所を訪問し、健康相談を行いながら、受診や薬で困っていることはないかとたずね歩く民医連の姿も聞き、医療従事者として、困難ななかでも人に寄り添う重要性を感じました。
■薬害を防ぐ
大学1年生のときに、薬剤根絶デーに初めて参加し、薬の副作用の後遺症に苦しむ患者に衝撃を受けました。大学の授業でサリドマイドの薬害が発生する過程を聞きました。ヨーロッパでは販売中止・回収がはじまったのに、日本は遅れ、さらに被害が拡大。薬剤師として何をすべきだったかを考えさせられました。薬剤師は薬のリスク管理のキーパーソンでなければならないと感じました。
民医連の薬の副作用モニター制度は、「民医連ならではの活動であり、薬が安全で有効なものなのか、正しい情報を発信していきたい」と語りました。
後輩たちには、「患者に寄り添う医療とは何か、ぜひ民医連の活動を通じて学んでほしい」とメッセージをのべました。
(民医連新聞 第1744号 2021年9月6日)