相談室日誌 連載503 身寄り問題にどう寄り添うか 関係者で支援者倫理カンファ(福岡)
団地で独居、身寄りがなく軽度認知症のある80代男性。転倒、圧迫骨折を起こし、ADLが低下、要介護3の認定に。食事も固形の物がかめず、ヘルパーや訪問看護師がおかゆを買ってきて食事介助し、デイサービスを利用しながら生活していました。
自宅で尻もちをつき、腰椎圧迫骨折で、リハビリ目的で当院へ入院。退院先は自宅か施設へ検討予定でしたが、次第に食事量が減り、寝たきりの状態に。誤嚥(ごえん)性肺炎をくり返し、酸素吸入も始まりました。衰弱する中、声かけに返事はできました。
入院当初、胃ろうや人工呼吸器について本人は「したい」と希望していました。認知症で理解できてない可能性があり、その後も主治医から何度もリスクを含め説明。本人の意向も曖昧(あいまい)で、リスクが高く苦痛を伴うのでは、と院内で倫理的話し合いも複数行い、悩ましい時間が過ぎていました。
担当SWから支援者倫理カンファレンスを提案し、関係機関へ連絡を行いました。支援者倫理カンファレンスとは、院内の事務、看護師、SWなど多部署で構成された身寄り問題チームが作成した「『身寄り問題』に関する対応マニュアル」のなかで、本人の意思確認が難しいと判断した場合、かかわりのある支援者に声をかけ、意思決定に本人の意思をできるだけ尊重するよう話しあうカンファレンスです。
今回はケアマネジャー、訪問看護師2人、病院担当スタッフが参加。ケアマネジャー、訪問看護師からは「元々寂しがり屋でデイケアなど人とのふれ合いを好み、誰かに側にいてほしいと思っている。治療継続すれば病院にいられるので胃ろうや人工呼吸器を希望したのかもしれないが、充分理解できないのではないか」という意見や、「カラオケや歌が好きで、おしゃれだった」など意見交換。最終的に急性期治療は行わず、終末期医療を行う方針となりました。少しでも心地よい環境で過ごしてもらおうと、病室で好きな音楽を流したり、アロマをたいたり、好みの服を着てもらうなどのケアが最期まで行われました。
身寄り問題の倫理的課題は、本人の意思になるべく添えるよう、病院内外関係なく以前からの関係者、地域も巻き込んだ支援が必要になると強く思いました。
(民医連新聞 第1743号 2021年8月16日)
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