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民医連新聞

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副作用モニター情報〈559〉 スピオルトレスピマットによる尿閉

 スピオルトレスピマット(以下、スピオルト)は、ムスカリン拮抗(きっこう)薬のチオトロピウム臭化物水和物とβ刺激薬のオロダテロール塩酸塩が配合されている吸入薬です。慢性気管支炎や肺気腫といった慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に使用されます。また、吸入薬であるため、局所的に効果を発揮することから、全身性副作用が少ないことも特徴です。今回、スピオルトによる全身性副作用である尿閉が報告されたので紹介します。

 症例)50代女性、肺気腫によりスピオルトが新規開始された。開始8カ月後、抗がん剤治療を行っている別の病院に入院した際に尿量が減っているとの訴えがあり、尿道カテーテルを挿入し、尿を排出する。それ以後、自力で尿が出せるようになり、薬による副作用とは言われなかったため、スピオルトの吸入は継続していた。退院後、薬の関与を疑い自己判断で中止。
 中止2カ月後、再度抗がん剤治療を行っている病院に入院。自己判断によるスピオルトの中止を指導され、再開するも尿閉となり医師の指示により中止。退院後は、自己導尿を行い徐々に回復していった。

* * *

 膀胱(ぼうこう)括約筋、排尿筋には、ムスカリン受容体が豊富に存在し、抗ムスカリン作用を持つ薬剤を使用することで、括約筋の収縮と排尿筋の弛緩(しかん)が起こり、尿閉などの畜尿障害が起こりやすいとされています。スピオルトの成分の一つであるチオトロピウムの尿中未変化体排泄率は74%と主に尿中に排泄されます。そのため、直接的に膀胱括約筋、排尿筋に作用します。さらにムスカリン受容体からの解離時間が、他のムスカリン拮抗薬であるオキシトロピウムなどと比較して100倍以上遅く、血中消失半減期が5~6日と長く蓄積します。以上の2つの特徴により尿閉の症状が発現したと考えられます。また、PMDAにはチオトロピウムの尿閉として、2004~2019年の間に29人(うち女性は1人)の報告がされており、女性でも尿閉は起こり得ます。特に消化管鎮痙(ちんけい)薬、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、総合感冒薬などの抗ムスカリン作用をもつ薬剤を併用する場合は、注意する必要があるかと思います。

(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1743号 2021年8月16日)

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