相談室日誌 連載502 コロナ禍で経済的困窮 求められる医療支援(愛知)
新型コロナウイルス感染症の流行から1年。この間、経済的な相談に訪れた患者の中に、感染症流行により収入が減少しているというケースが、当院でも複数ありました。
入院時所持金は数十円
派遣で建築関係の仕事をしていた50代のAさんは消化器疾患で入院となりました。コロナ禍の影響で派遣先も少なくなり、解雇される同僚が増え、いつ仕事がなくなるか心配していたそうです。数週間前から体調不良で出勤数も減って、収入は前月の半分以下となり、入院時の所持金は数十円だったため生活保護を申請しました。退院後は生活を立て直すために九州の実家に帰りたいと本人が希望。数十年ぶりに連絡を取った親族もAさんに戻ってきてほしいとの意向があり、行政とも検討を重ね、実家へ退院することができました。
月収半減で貯金底つき
入退院を何度かくり返しているBさんはタクシーの運転手で、通常月30万円近くあった給料がコロナ禍の影響で月16万円に減ってしまい、家族3人での生活を維持するために、貯金は底をついてしまいました。症状の原因は自宅の環境に問題があるとわかり、医師から引っ越しや入院加療の提案がありました。しかし、引っ越すにも費用がかかるため困難で、通院加療を強く希望されました。SWから生活保護の相談も提案しましたが、現在は自身で自宅環境の整備を工夫し、通院加療を継続しています。
新型コロナウイルス感染拡大により、さまざまな業種で長期的に収入減少が続いていると思われます。こういった状況がいつまで続くかわからないなか、費用のことが心配で治療が必要な状況でありながら、病院受診や入院をちゅうちょしてしまう人が出てきていることが気がかりです。新型コロナウイルス感染拡大対策と併せて、収入に影響がでている人が医療をきちんと受けられる支援が必要だと感じます。
(民医連新聞 第1742号 2021年8月2日)
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