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民医連新聞

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副作用モニター情報〈558〉 エリキュースの投与量設定

 エリキュース(血液を固まりにくくする抗凝固薬)による吐下血の症例が報告されました。

症例)90代後半女性。身長140cm、体重35kg。血清クレアチニンクリアランス(以下CCr、単位はmL/min)≒20。
 心房細動、心不全、貧血等でエリキュース2.5mg×2、ラベプラゾール10mg、クエン酸第一鉄50mg、エナラプリル2.5mg、アゾセミド30mg、等内服中。
 吐下血にて入院し、内服薬すべて中止し輸血4単位実施。

入院1日目 吐下血症状消退。
入院2日目 エリキュース、アゾセミド以外の内服薬再開。
入院11日目 退院。
※血清クレアチニン値(以下Cr、単位はmg/dL)を1.35と試算。

* * *

 エリキュースについては、当モニターに寄せられた54件中、出血関連の副作用は17件あり、そのうち、80歳以上は9件でした。血尿の1例を除き、2.5mg1錠1日2回の服用で発現しています。
 80代男性5件。体重65kgでCr=1.05の
症例のみ5mg×2、体重66.3kgでCr=0.95、体重不明でCr=0.52が各1件、体重、検査値不明2件。
 90代前半男性3件。1件はCCr=19.0。他は2.5mg1錠1日1回で開始した1件と、体重、検査値不明の1件。
 90代後半女性1件。体重、検査値不明。
 添付文書上では「通常、成人には1回5mgを1日2回経口投与するが、80歳以上、体重60kg以下、Cr≧1.5、のうち2項目以上満たす場合、投与量を2.5mg1回1錠1日2回投与へ減量(適宜減量の記載なし)、Cr<1.5は禁忌」です。
 用量制限に年齢と体重による基準があり一見厳しく映りますが、例えば、79歳女性、体重40kg、Cr=1.4ではCCr=20.6となり、減量どころか通常量のままでよいことになります。したがって、他のDOACの腎機能による用量制限の基準
CCr<50のほうが厳しく、実はもっとも減量基準が緩い薬剤と言えるでしょう。
 80歳を超える高齢者では、低体重の場合、承認用量ではありませんが、さらなる減量が必要かもしれません。本剤の必要性、ワルファリンとの比較、腎機能を評価するなど、より踏み込んだ判断が求められます。

(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1742号 2021年8月2日)

副作用モニター情報履歴一覧