各地でOPEN! 気軽に、身近な人権Cafe
女性、子ども、学生、高齢者、外国人など、コロナ禍のあらゆる場面で“人権”が侵害されています。全日本民医連では人権を学び、身近に捉える「人権Cafe」を発行し、学習運動を提起しています。各地の実践を紹介します。(稲原真一記者)
本当の多様性を知って 長野
長野・けやき薬局では「人権Cafe」を推進するためのプロジェクトをつくり、3人の担当者を決めました。担当者は月1回の全体会で、その月のテーマに沿った学習をして共有することに。
6月は2年目薬剤師の河西和子(よりこ)さんが、ジェンダーにかかわる「LGBTQ」をテーマに学習・発表。河西さんは学びを深めるなかで、「知っていたつもりのことが、実は理解できていなかった」と気づきました。「自分にはわからない感覚を持った人とも、お互いに認めあい尊重できることが本当の多様性だと知った」と語ります。発表を聞いた仲間からは「単身者に婚期や子どもの話題をすることもジェンダー問題だと気づき、身近なテーマだと思った」との感想がありました。
けやき薬局では、事務長の古畑克己さんが、日報に「事務長レポート」というコーナーをつくり、人権にかかわるニュースや話題を毎日掲載。朝会で紹介しています。テーマごとに学習を深め、職場で共有していく予定です。
できることからコツコツと 和歌山
和歌山生協病院の放射線課では、「3人集まれば、人権Cafe」を合い言葉に学習をすすめています。ある日、会議に出席していた放射線技師で課長の鶴田太平さんが戻ってくると、職場で職員が輪になっていました。その手には「人権Cafe」が。
「職責者不在でも、合い言葉通り実施されていました。人権“意識高い系”職員に育ってくれていることを、うれしく思います」と鶴田さん。「6人の少数部門ですが、少しでもみんなですすめられるように、との思いではじめた」と教えてくれました。
職員からは「自分の当たり前が、当たり前ではない人がいると知った」「どうすればより良い社会になるか、考えるきっかけになった」などの感想がありました。
鶴田さんは自身の経験から、放射線技師でもSDHの視点を持って患者とかかわる重要性を知り、「他の技師にも知ってほしい」と学習をすすめています。20代の職員が仲間に加わり、職場にも活気が生まれており、今後も積極的に学習を行う予定です。
地協まきこみ「夜Cafe」
鳥取民医連の教育青年委員会では、紙面をどう活用するか議論。「読み合わせする余裕のない職場も珍しくない。もったいない!」と、特集テーマに合わせた学習企画を開催することに。「自宅からオンラインで飲み物や食事を取りながら、気軽に参加できるものにしたい」と、少し遅めの19時開始。グループワークなどもありま
せん。企画はその名も「夜Cafe」。「市民目線で身近な話が聞きたい」と、新婦人の会京都府本部の事務局長、澤田季江(としえ)さんに講師を依頼しました。
教育青年委員会の委員長の横山洋介さん(理学療法士)は、中国・四国地協の運営委員会でとりくみを紹介。「オンラインなので地協内に公開します」と呼びかけました。当日は鳥取以外にも広島、島根、高知など30カ所からアクセス、医学生も参加しました。
澤田さんの講演は「そもそもジェンダーとは」から始まり、「女性の平均賃金は男性の52%」「国会議員の女性比率は10%」など、日本のジェンダーギャップを紹介。その原因は「戦後、財界が“家父長制”“家族”という価値観を利用し、自分たちの金もうけに都合のいい男性像、女性像を流布した。そして政治が、それを後押しした」と解説。「日本の医療分野は職種ごとに極端な男女比になっているなど、格差がもっとも大きい。ジェンダー平等には女性比率の高い医療・福祉などケア労働の賃上げ、男女ともに家事・育児ができる環境整備が一番の近道」と言及しました。
講演後は医師、看護師、事務幹部などからの意見が飛び出し、議論が白熱。「いまだに女性は男性の6割しか働けないと言い放つ医局がある」「男性も育児にかかわれず、失われたものがあると思う」という意見。「父子家庭となって初めて女性の大変さを実感した。民主団体でも矛盾の解消が必要」「LGBTQの当事者だと職場で知られ、退職する職員が出てしまった。現場で意識的に無意識を変える努力が大切」といった提起もありました。澤田さんからも「ぜひ民医連内でのジェンダー平等をすすめ、すべての人が働きやすい職場をめざしてほしい」と期待が寄せられました。
講演は録画し、参加できなかった職員や労働組合にも共有予定。横山さんは「日本では、人権問題=差別問題というイメージでタブー視しがち。もっと身近な問題として捉えてもらえたら」と話します。今後の課題は「若手や現場職員の参加をどう増やすか」で、次はジャンボリーなどとの共同も模索中。県連を越えた企画となり、「地協の団結を深めるとりくみにもなれば」と語ります。
(民医連新聞 第1741号 2021年7月19日)