みんなで実践 職員まもるヘルスケア 全日本民医連 職員健康管理委員会 (3)差別・偏見へのワクチンを
長引く新型コロナウイルス感染症の影響で現場が疲弊するなか、職員のヘルスケアはますます重要です。全国でとりくまれた、職員のヘルスケアを伝える連載第3回は差別・偏見へのとりくみです。
新型コロナウイルス感染症への不安や恐怖から、地域では感染者や、医療・介護従事者に対する差別や偏見、排除などが社会問題となり、職員のなかでも動揺が広がりました。
昨年4月、A病院の地域で初めて感染者が出たとき、患者が差別や偏見に晒(さら)され、地域に住み続けにくくなる事例が起きました。A病院はこの「コロナ差別」「自己責任論」が引き起こす事態を乗りこえられる「ワクチン」を模索しました。そのなかでシトラスリボンプロジェクト(※)を知り、「差別や偏見を考えるきっかけにできないだろうか」と提案しました。これに多くの職員・組合員が共感し、昨年7月から病院や医療生協としてとりくむことに。リボンをつくる人 袋に入れる人、広める人など、できることで協力しあって、さまざまな色のリボンをつくり、患者や利用者が自由に持ち帰れるよう外来に並べました。
院長や病院管理部を中心に、ローカルラジオ番組や看護師会などでも紹介。とりくみは46団体からの賛同、5市町からの後援を得ました。さらに市議会でも取り上げられ、公民館や保育園、学校、JA、行政機関にも、シトラスリボンの輪が広がりました。
このことは県連内の各種会議で紹介され、全県の事業所と医療生協の組合員に普及していきました。事業連携している施設や病院、小中学校や看護学校にも紹介して、シトラスリボンを配りました。特にA病院の地域では、今年4月末までに3万3000個のリボンを配布しました。
クラスターが発生した老人保健施設からは「近隣住民から心ない言葉を受けるなか、シトラスリボンに励まされた」とお礼の電話がありました。
学校や生協支部からも、「感染者にやさしいまちであってほしい」「医療・介護現場で働く人を応援したい」というメッセージが、手紙やメールで寄せられました。
運動にとりくんだ職員からは、「シトラスリボンをきっかけに地域の人と語りあえ、穏やかな気持ちになった」「共感する人の広がりを感じて、勇気づけられた」などの声があり、現場も励まされるとりくみになりました。(保健師)
※リボンを身につけることで、感染者や医療・介護従事者へ「ただいま」「おかえり」の気持ちを示す運動。
(民医連新聞 第1740号 2021年7月5日)