相談室日誌 連載499 本人の希望かなえる 職場・地域で垣根越えた支援(青森)
70代男性Aさん。「火傷した」と突然救急外来を受診。身なりや会話に違和感があり、帰せる状態ではないと判断し入院しました。熱傷、脳血管性認知症、精神障害の診断がつき、要介護1の認定を受けました。家族とは疎遠で一人暮らしでした。
入院後は比較的安定し、元気になりましたが、重度の物忘れがあり、金銭管理が困難でした。さらに自宅には今まで運転していた車、足の踏み場がないくらいの本や弁当のカラ、荷物、衣類が散乱し、お風呂は排水口がつまっており、使用できない状態でした。一人暮らしを再開するのは到底無理だろうと思いましたが、Aさんは自宅へ帰ることを希望していました。
施設入所も考えましたが、金銭的な問題と自宅への退院希望が強く、自宅での生活ができないか「看護小規模多機能型居宅介護事業所」(以下、看多機)のスタッフと相談しました。
病棟スタッフや看多機スタッフ数人と数日がかりで自宅を清掃して住める状態にし、毎日看多機で訪問し食事の準備をしたり、時々通所し入浴することになりました。
近隣の組合員が定期的に訪問し声掛けをしてくれたり、金銭管理は成年後見人が決まるまでの間、Aさんのなじみの金融機関がAさんが来た時に必要な分だけ引き出したり、引き出す必要がない場合はケアマネジャーに連絡をくれるなどの協力をしてくれました。そして認知症専門医の協力を得て、無事成年後見人も決まりました。
自宅退院は到底無理と思われましたが、さまざまな職種や地域の人びとがかかわり、約1年間一人暮らしを継続することができました。その後施設に入所することになりましたが、成年後見人が車や自宅の売却などで資産を運用し、ローンがなくなり無事施設で生活できています。
さまざまな職種や地域の人びとが垣根を越えて「なんとかしよう!」と協力したことで成立した事例だと思います。民医連の役割はもちろん、地域の協力や多くの人たちが繋がることで、支援の輪も強固になるとあらためて感じました。
(民医連新聞 第1739号 2021年6月21日)