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民医連新聞

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相談室日誌 連載497 コロナ禍帰国困難な外国人 必要な医療の保障を(島根)

 アジア圏在住のAさん(70代男性)は、2020年、観光ビザで息子夫婦といっしょに親族に会いに来日していました。しかし、コロナの影響で母国がロックダウンし帰国困難となりました。飛行機は、飛び始めましたが、高額でかつ予約もとれず、親族が経営している飲食店の一角で寝泊まりをしている状況です。親族自身もコロナの影響のため経営難になり、経済的支援をする余裕はありません。Aさんは、母国では脳梗塞後遺症、アルコール依存症、腎臓障害、認知症の診断を受けていました。外国人支援団体のNPO法人を通して、物忘れ、徘(はい)徊(かい)、不隠や興奮があり受診をしたい、と当院に相談がありました。慣れない環境で認知症が悪化、徘徊も多くあり家族も疲弊しています。
 同じくアジア圏在住のBさん(50代女性)は、孫が生まれたため観光ビザで息子家族に会いに来日していましたが、コロナ禍で帰国困難に。貯金も使い果たしてしまいました。息子家族もコロナのため、収入が減っており、支援が難しい状況です。そんな中、持病の糖尿病が悪化し、外国人支援を行っている、しまね国際センターに相談。当院を紹介されました。
 Aさん、Bさんともに観光ビザでの来日のため、現在の制度では保険証を取得できず、全額自己負担となります。
 コロナ禍で病院経営も厳しいのですが、人道的・道義的に診療を拒むわけにはいかないと、協議を重ね、二人とも無料低額診療事業で受診してもらうことになりました。また、県に「外国人に対して、滞在期間が3カ月を超える場合は国保加入できること」「外国人の未払い医療費を行政で負担すること」などの要請を行いました。「県として、どういったことができるか検討したい」と回答がありましたが、有効な解決策は依然ないままです。
 コロナ禍の中、島根県でもこのようなケースが生じています。無低診の対象となったことで安心して受診できますが、医療費だけの問題ではありません。
 今後も行政に対して、無保険の外国人であっても必要な医療が受けられ、そして母国に帰国できるよう、訴え続けていきたいと思います。

(民医連新聞 第1737号 2021年5月24日)