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民医連新聞

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介護の未来をひらく 特養あずみの里裁判をたたかって 連載(9) 事故対応の基本と教訓を くり返し学ぼう 全日本民医連副会長 医師・平田 理さん

 全国の仲間の奮闘で「無罪」を勝ち取った特養あずみの里裁判。そのたたかいや教訓をふり返る、連載第9回は、全日本民医連副会長の平田理さんです。

 裁判闘争を通じて、介護現場での重大事故に対応した危機管理にはさまざまな課題があることも明らかになりました。おやつを食べていた利用者の急変を医学的検証なしで窒息と思い込み、窒息を前提に事業所でふり返りを行い、連携医療機関や法人・県連レベルでの組織的対応は、全く不十分でした。弁護士が十分に関与した法的評価が遅れ、医師が関与した医学的評価がなされないまま、窒息により急変させてしまったという前提で、行政への届け出や保険会社との手続きもすすめてしまいました。
 こういった危機管理上の課題は、当時、あずみの里に限ったことではありませんでした。全日本民医連では42期に介護安全委員会を設置し(現在は医療・介護安全委員会に統合)、全国的・組織的なとりくみを開始、理事会で「介護現場における重大事故に対応した危機管理の基本指針2018」を確認し、全国に発出しました。
 「基本指針」では、事故発生リスクの高まりや介護現場での特徴をのべたうえで、事故対応上の基本原則と具体的な整備項目・指針などを示しています。危機管理体制を整備して組織的に対応すること。正確な事実調査がまず重要なこと。十分な弁護士の関与による法的評価や医師らによる医学的評価を経て、事故に対する基本的スタンスを決めること。その際“前方視的視点による事前的評価”(当時判明していた事実のみを基礎に当時の視点で適否を評価すること)に徹し、「こうすれば起きなかった」「こうすれば防げた」といった“後方視的視点による事後的評価”(後で判明した事実・因果関係・結果から原因を探し評価すること)は排除すること、などが強調されています。先に触れた保険についても、保険を活用することは事故の責任を認めて賠償することにほかならず、組織的な対応による適切な評価を経てからの判断でなくてはなりません。
 「特養あずみの里」裁判を通じて学んだ教訓を、くり返し学習することが大切です。

特養あずみの里裁判とは
 2013年、おやつのドーナツを食べた入所者が急変し、のち死亡。その場にいた看護職員個人が業務上過失致死罪で起訴された、えん罪裁判。無罪を求める署名のべ73万筆余りが集まり、20年7月に東京高裁で逆転無罪。

(民医連新聞 第1736号 2021年5月3日)