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民医連新聞

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診察室から 人を診る理念と出会ってから

 民医連の存在すら知らなかった私が、民医連の病院である上戸町病院で初期研修を行おうと決意したのは医学部5年生の時でした。友人の動きにつられて何の気なしに行った合同説明会がすべての始まりだったと思うと、不思議なものです。
 当時の私は、実習で目にした大学病院での医療に違和感を持っていました。病という患者の人生の大きな分岐点にかかわっているのに、「患者がどこの誰で、どう生活していて、これまでどう生きてきて、どう考えているのか」が重視されていないと感じたのです。病気に対しては間違いなく最先端の素晴らしい治療が行われているはずなのですが、「疾患」に対しての「治療」だけが、ただ単調に提供されているように感じました。「患者の人生に寄り添いたい」という自分の志した医療との違和感を強く抱く一方で、「研修病院なんて、どうせどこに行ってもこんなものだろう」という諦めのような感情も持っていました。
 そんな中、たまたま説明を聞いた上戸町病院の「病気だけではなく人を診る」という理念は衝撃的でした。その人の抱える病気だけでなく、その人がもつ考え方や感情、その人を取り巻く家族や地域などの背景を理解した上で、治療方針を決定していく先輩医師の姿を見て、「どこでもいい」と思っていた初期研修が「ここで働きたい」という希望に変わりました。
 それから時間も流れ、そんな私も医師となりました。上戸町病院での研修では、他県の病院に行くことが多いため、新型コロナウイルス感染症の影響を多分に受けました。でも、想像していたよりもずっと充実した2年間を過ごすことができ、今年3月で無事に初期研修を終えることができました。
 4月から総合診療科専攻医として新たな日々が始まりました。あの時の先輩医師の背中に少しくらいは近づくことができたのか、まだ自分ではわかりませんが、これからも「患者を診る」のが医師であるという初心を忘れずに、日々を過ごしていこうと思います。(樋口悠真、長崎・上戸町病院)

(民医連新聞 第1735号 2021年4月19日)

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