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民医連新聞

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介護の未来をひらく 特養あずみの里裁判をたたかって 連載(7) 正しい記録で危機管理を 学習会で学びさっそく改善 神奈川・デイサービスきょうまち髙橋富美子さん(生活相談員)

 全国の仲間の奮闘で「無罪」を勝ち取った特養あずみの里裁判。そのたたかいや教訓をふり返る、連載第7回は、神奈川の仲間・髙橋富美子さんです。

 2019年3月、特養あずみの里裁判一審判決の際、私は自ら志願して長野県松本市まで支援に行きました。「これが有罪なら介護職や看護職など怖くてできない」との思いがあったからです。
 すでに示談が成立し、1000万円を超える賠償金が支払われているにもかかわらず、罰金20万円の有罪判決が出て、がく然としたことをはっきり覚えています。
 この一審判決は全国の介護施設に衝撃を与えました。入所者に急変があった場合、職員が刑事責任を問われることになるからです。
 関心を寄せていた私は、同年4月に神奈川民医連が開いた「記録について」のセミナーに参加しました。受講後も、これは不当判決だという思いに変化はありません。しかし、同時に特養あずみの里の対応は、それが責任感の強さや利用者を思う気持ちの強さからだとしても、危機管理としては課題もあったと感じました。記録をつけるための客観性が欠けていた面があったかもしれません。
 セミナーの中でもっとも印象に残ったのは、「事実と意見(判断)を分ける」ことです。
 このケースに当てはめると、当該利用者の女性がおやつを食べた後に意識を消失したのが「事実」、その場で窒息としたのは「意見(判断)」です。誤嚥(ごえん)かどうかは診断をしない限り断定できないからです。しかし、「窒息」は、記録にも示談書にも、はっきりと書かれました。窒息させてしまったという思いと、包み隠したくないという責任感の強さから、当該職員が自身の「意見(判断)」を記述してしまったと推測します。
 誠実な反応だと思いますが、その記録があることで、裁判では「職員が窒息と認めたのだから、窒息と鑑定できる」とされ、結果的に一審では有罪となりました。
 「記録とは、われわれの身を守るものでもある」と、セミナーの受講を通じて実感し、当デイサービスでも研修をしました。私自身の記録の書き方も、具体性と客観性を持ってとりくむことができるようになったと自負しています。
 その後、2020年7月に、一審の有罪判決は破棄され無罪判決が出て、私も胸をなでおろしました。

特養あずみの里裁判とは
 2013年、おやつのドーナツを食べた入所者が急変し、のち死亡。その場にいた看護職員個人が業務上過失致死罪で起訴された、えん罪裁判。無罪を求める署名のべ73万筆余りが集まり、20年7月に東京高裁で逆転無罪。

(民医連新聞 第1734号 2021年4月5日)