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民医連新聞

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相談室日誌 連載494 心身の回復に時間必要 リハビリ矮小化で矛盾浮き彫りに(東京)

 Aさんは40代前半の男性です。本人、母、弟の3人暮らし、1年ほど前から持病のために仕事ができなくなりました。当院から脊椎損傷の治療のためB病院へ転院しましたが、高度肥満で減量をしないと手術ができないと判断され、減量と基礎疾患のコントロール目的で当院へ転院、回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ)でリハビリと減量をすることになりました。
 ベッド上で排せつできず、看護師が2人で介助。麻痺(まひ)の進行もあり、夜間帯の移乗では、別の病棟の看護師や当直医の応援でベッドに戻したこともありました。突然歩けなくなり、「できない!」と看護師にあたるなど退行的な言動もありました。麻痺の進行や疼痛(とうつう)もあり、疼痛改善の手術のため、再びB病院へ転院しました。
 介助量が多く、FIM利得(日常的な生活動作が改善した点数)が乏しいAさんを再び回復期リハで受け入れられるのか。多職種で検討し、評価や納得のためリハビリの必要があると判断し、再び回復期リハ病棟へ転科となりました。セラピストが肩に乗せて起立訓練を行い、体重は当初の3分の2になり、装具を付けて両つえで短距離を歩けるまでに改善しました。不適応な言動もなくなりました。
 チームでは、弟がAさんと認知症の母を抱えると将来にわたり生活が制約されかねないこと、Aさんの希望する独立した生活ができるよう、生活訓練や職業リハビリのために県リハビリテーションセンターによる受け入れまで入院継続が必要だ、と合意。回復期リハの算定期間を過ぎたあとは、地域包括ケア病棟を利用しました。
 Aさんが生活再構築のスタートラインに立つまでには、1年が必要でした。仕事を辞めて社会との接点を失う、障がいを持つなど、自分だけで負の循環から抜け出すことは難しいでしょう。心身が回復し、障がいと葛藤し、折り合うのに必要な時間と、DPCやFIMなどアウトカムを求められる病院と、時間軸のゆがみは広がっています。高齢患者の運動器リハビリの減査定も続き、リハビリの意味が矮小化(わいしょうか)され、結果が出る人だけ恣意(しい)的に選ばれていることになっていないか。リハビリの神様は後ろ髪も長いと信じています。

(民医連新聞 第1733号 2021年3月15日)

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