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民医連新聞

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「あの日」から10年 特集3・11 増える孤独死や自死 見えない復興、問題は深刻化災害公営住宅訪問調査から 宮城

 宮城民医連では2016年から毎年、災害公営住宅で訪問調査をしています。東日本大震災の被災者が抱える問題をつかみ、支援に役立てることが目的です。昨年はコロナ禍で規模を縮小し、対象をこれまでに回答した人に絞り、調査しました。調査開始から5年目に見えてきたものは――。(稲原真一記者)

 宮城民医連は震災直後から“もっとも困難な人に寄り添う”という民医連の理念のもと、仮設住宅への訪問活動や調査を行ってきました。「仮設住宅から災害公営住宅へと移る中、住民のみなさんがどんな思いを抱えているのか、と調査を開始しました」と話すのは、宮城民医連会長の宮沼弘明さん。調査には毎回参加しています。昨年はコロナ禍で郵送のみの調査を検討していましたが、職員の意見をもとに、一部訪問調査も実施することになりました。

■困窮が健康悪化招く

 今回は経年的変化やSDHの視点も意識しました。昨年10月末から11月初頭、704人を対象に、職員、共同組織、医学生などのべ100人が参加。郵送367件、訪問378件、対話166件で、調査票369枚を回収しました。
 宮沼さんは調査開始当初、「仮設から公営住宅へと生活環境が変わり、健康状態は改善しているのでは」と思っていましたが、結果は逆でした。今回の調査でも、「公営住宅入居後に健康状態が悪化した」との回答は33%を占め、抑うつ傾向があると考えられる人は57%と過半数にのぼる結果に。また「体調が悪くても受診を我慢する」と回答した人は16%、その理由の多くは医療費の負担でした。2017年の結果と比較すると、過去に「経済的に苦しい」と回答した人の方が、健康状態の悪化や抑うつ傾向の割合が高く、経済的困窮が健康に影響していることがわかりました。

■身近な死、すすむ高齢化

 新たに加えた調査項目では衝撃的なデータもありました。近隣や身近な人で孤独死や自死などを聞いたことがある人がのべ100以上。その経験がいつだったかを聞いたところ、18~20年だけで78%を占めました(図1・2)。宮沼さんは「震災から日がたつにつれ、増えているように見える。背景には高齢化や独居の増加、気軽に人と会えない災害公営住宅の環境があるのでは」と推測します。
 調査では回答者のうち、70代以上が56%で、一般の公営住宅よりも高い高齢化率です。独居の世帯も増加し、社会活動に参加していない人も56%いました。

■打ち切られる支援

 震災から10年、国は復興交付金や固定資産税の特例措置などの廃止を予定しています。宮城県は、来年度から災害公営住宅の健康調査の中止を決めるなど、被災者への支援は打ち切られようとしています。「見た目には復興しているようでも、住民の不安は5年前から“健康問題、生活や収入、家賃”の3点で変わっていない。問題は解決しておらず、むしろ深刻化している。根本には『建物は建てたから、あとは自分でやれ』と、自助を迫る国や県の姿勢がある」と宮沼さんは指摘します。

*  *  *

 宮城民医連は、3月に今回の調査結果をマスコミに公表し、医療費や家賃の減免、調査の継続などを国や自治体へ訴える予定です。今回明らかになった孤独死や自死の問題には、共同組織とともにとりくむことを検討しています。
 2月13日には震度6強の地震が、東北地方を襲いました。「被災者にとって、震災の記憶が風化することはない。災害が起こるたび、困難な人は生まれる。そして、もともと弱い立場の人ほど影響が出やすく、そこに目を向けて支援をしていく必要がある」と宮沼さん。困難な時ほど民医連の役割が重要だと強調しました。

(民医連新聞 第1732号 2021年3月1日)