リレートーク 私と被爆75年(10) 力ではなく話し合いが大切 北海道・稜北クリニック医師 畑中恒人さん
昨年は被爆75年。反核・平和運動を行う全国の仲間にとりくみや思いを聞きました。核兵器のない世界をつくるために私たちにできることは?
2015年NPT再検討会議・ニューヨーク行動に参加した時のこと。全身真っ赤に焼けただれた自らの被爆当時の写真を手に「苦しみのあまり『殺してくれ』と叫ぶ毎日だった」という長崎の被爆者・谷口稜曄(すみてる)さんのスピーチに大きな衝撃を受け、私は「核兵器の廃絶こそ医師の使命」という誓いをしっかりと自分の胸に刻み込みました。
以来この数年間、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)の集会(英国、モンゴル)をはじめ、国内外の反核平和運動の最前線に立ち、市民社会の人たちと行動をともにしてきました。その際撮影した動画を短時間のビデオに編集し直し、各種集会や外来待合室のTVモニターを使って上映、核兵器廃絶を訴えてきました。先日は「核兵器のない世界へ確かな一歩」というタイトルでYouTubeにも投稿しました。オンラインによる原水禁世界大会に参加した6人の青年職員に、核兵器禁止への思いを語ってもらい、3分間のビデオに編集したものです。
最近、米国公衆衛生協会の年次総会で、核兵器禁止条約の批准を大統領に迫る決議案が採択されたといいます。「核廃絶は公衆衛生の課題」という考えからでしょうか、米国の医師集団の良心に深く感動しました。核兵器廃絶のとりくみは気候変動による地球の緊急事態への誠実な関心・行動と、相通ずるものがあると言っていいでしょう。同様に、感染症や公害など身近な課題と同一線上のものである、と言っては言い過ぎになるでしょうか。核兵器禁止条約の発効は、国家間の紛争を核の(抑止)力ではなく話し合いで解決することがいかに大切かを教えています。また、そうすることなしに本条約を実効性のあるものにすることはできないと思います。(連載終わり)
(民医連新聞 第1732号 2021年3月1日)