改訂版ができました 全国からの学びが詰まったヘルスケア指針の活用を
全日本民医連職員健康管理委員会は昨年12月18日、「新型コロナウイルス感染症(COVID―19)に関する職員のヘルスケア指針Version2(増補改訂版)」(以下、改訂版)を出しました。1月には冊子となり、全国へ発送しています。委員長の今村高暢さん(愛媛生協病院、精神科医)に聞きました。(丸山いぶき記者)
昨年5月、新型コロナウイルス感染症の第一波の中で、私たちは「新型コロナウイルス感染症(COVID―19)に関する職員のヘルスケア指針」(以下、旧版)を出しました。それ以降、各地からさまざまな経験や工夫の報告がありました。
■改訂版のポイント
旧版はステージ1~Xで対応を書き分けていました。しかし、ステージでは段階を追って深刻化する印象がありますが、ステルス患者(別の疾患で入院し、後に感染が判明する)や大都市部での感染爆発など、さまざまな「場面=SCENE」が突然に起こり得ることを踏まえて、改訂版ではシーン0~Xに表現を変えました。
シーンXは、旧版の時は遠い先のこととして想定していましたが、感染爆発でいのちの選択を迫られる場面は、現実の問題になってきています。倫理的な判断も含め、今回少しふくらませた部分です。ただ現状では現在進行中の深刻な事態ですので、全国の経験も含めて、今後、議論を重ね、さらなる改訂が必要と考えています。
改訂版は各地の経験や新たな知見にもとづき議論を重ね、つくりました。ヘルスケアの専門家がいない介護事業所や小規模事業所を意識した内容も盛り込みました。ヘルスケアの中でも、特にメンタルヘルス上の対応が必要な現状を踏まえて、「ヘルスケアチームの具体的活動指針(例)」も加えました。全日本民医連ホームページに公開中の学習用動画とともに活用し、意見を寄せてください。
■長期化をともに乗り越える
新型コロナウイルス感染症の特徴は、病状も事態も急速に悪化することです。現場は混乱しやすく、事前の準備がより重要です。
昨年12月から年明けにかけてクラスターが発生した兵庫・尼崎医療生協病院では、早くからメンタルヘルスケアサポートチームを立ち上げ、抜群に機能しました。さらに全国から支援を受け、各地で運用されていた調査票も使い、職場復帰の際の書式も作成。職員の健康状態をきちんと評価して対応したそうです。外部からの情報や支援が役立ち、全国の力が発揮された経験でした。民医連にとって大きな教訓として、学習用動画にも早速、生かしています。
地域や事業所ごとに状況は違いますが、共通しているのは長期化するストレスへの対処が必要なことです。職員のみなさんは「セルフケアのための10のヒント」を積極的に活用して、セルフケアを続けてもらえればと思います。
石川・城北病院では個別面接と調査票を組み合わせ、職員の健康を守ろうとしています。面接で元気に見えた職員が、調査票では不安が大きかった例もありました。コロナ対応を家族に伝えていない職員で「人間関係に悪化はない」と答えていても、家族を不安にさせないよう配慮した結果、という複雑な心境も垣間見えました。
福岡・千鳥橋病院は、ピア(仲間)でささえ合うとりくみをしています。教育主任会議でペアを組んでのミーティングを行い、その上で、全看護職場にささえ合いのエールのメッセージ交換を行ったそうです。ほかにも終業前の10分間に、その日あったことを吐き出せるようにしている事業所もあります。ピア・カウンセリングというと難しく聞こえますが、仕事が終わった後に同僚同士で「今日はどうだった?」と、感染予防に注意しながら少し話すだけでもいいのです。会話しないと晴れない気持ちもあります。そうした場づくりを通して、管理者は「職員を守る」というメッセージを、くり返し伝えることが大切です。
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長期のストレス状況を乗り越えるには、「私たちは世界の状況を把握し対処できていて、自分のしていることには意味がある」(首尾一貫感覚)と感じることも重要です。そうした視点は経験の中から鍛えられ身につきます。全国の経験を自分たちの事業所にも生かし、自らの経験にできるのも、民医連の全国組織としての優位点です。収束が見えない中、今後もいろいろなことが起こるかもしれません。それも踏まえ、今後も全国の経験を伝え合い、ともに乗り越えていきましょう。
(民医連新聞 第1731号 2021年2月15日)