学業に専念できる支援を 看護学生の悲痛な声を政府へ バイト禁止で収入ガタ落ち… 実習少なく看護師になれるか不安…
コロナ禍は看護学生にも深刻な影響をおよぼしています。全日本民医連は全国の看護学生が置かれている状況を実態調査で明らかにし、文部科学省、厚生労働省へ要望書を提出。記者会見をしました。(代田夏未記者)
「卒業までにすべての授業が終わるか不安」「本当に看護師になれるのか」「バイトの収入、家庭の収入が激減し、学費が払えるか心配」―。コロナ禍のもと、看護学生に不安が広がっています。
全国の看護学生を対象に昨年9月、アンケート調査を実施。1127人から回答を得ました。2017年の「看護奨学生調査」では看護師養成校の学費が高額で、アルバイトをしたり、複数の奨学金を受けるなど、経済的に厳しい看護学生の状況がわかりました。今回、コロナ禍でさらに困難な生活状況が明らかになりました。結果をもとに1月12日、厚生労働省、文部科学省に看護学生への経済的支援、看護師養成校への助成を求める要望書を提出しました。
コロナ禍で役割を再認識
全日本民医連理事の宮川喜与美さんが実態調査の結果を報告。親などから経済的援助を受けている学生は57・2%で、2017年(49%)と比べてより8ポイント増加。経済的に困った時「家族に相談する」が69・5%で、前回から10・8ポイント低下。「アルバイトを増やす」が23%で9・7ポイント増加しました。
奨学金を受けている学生(90・8%)のうち返済に不安を感じる学生は51・4%。奨学金は学費のほか、生活費(家族含む)や返済のための貯金に充てている学生が562人と、ほぼ半数。アルバイトをしている学生は53・9%で、実習中もバイトをしないと生活が成り立たない学生は17%でした。
コロナ禍で生活に困ったことが「ある」は29・7%。「ストレス」がもっとも多く、バイト禁止、運動不足と続きました。家族の生活環境で困ったことが「ある」学生は、20・9%。感染の心配、家族の収入減などでした。
新型コロナウイルス感染拡大で、めざす看護師像が変化した学生(28・3%)のうち、90%が「がんばりたい」「役割を再認識した」と回答。困難な事態でも志を高めている学生が多い一方で、「不安」「迷い」がある学生も10%いました。学生の4人に1人が実習再開の見込みが立っておらず、教育実習環境の整備が必須です。
要望として、学費免除の拡大、現金支給(経済的支援)などがあげられました。
実態に合う支援を
東京・勤医会東葛看護専門学校の学生が、動画で自分たちの声を届けました。同校副校長の山田かおるさん(看護師)は、「以前から8割の学生がバイトをせざるを得ない状況だった。コロナ禍でバイトなどが大幅に制限され、困窮している。学びの基盤となる経済的支援を」と訴えました。
看護師養成校への支援について、オンラインの施設環境を整える補助金や、学校の実情に合わせた学内実習への支援を検討すること、感染予防対策の備品への助成、実習や授業の制限がある中で国からの積極的な助言や支援が必要と訴えました。全日本民医連の岸本啓介事務局長は「コロナ禍で看護師不足が問題となっている。困難な中でも看護師をめざす学生を支援することが政治の責任ではないか。学校の実情を見て学生を救ってほしい」と話しました。
これらの要望に対し、文部科学省と厚生労働省から、「学生支援緊急給付金の継続は検討する」などと回答がありました。学生支援緊急給付金は申請条件が多く、書類も複雑で実態に合っていません。簡易なものへの変更と、再度の給付も求めました。
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看護学生の実態はテレビでも報道され注目されています。山田さんは「取材を受けた学生が顔を出して経済状況を話したのは、多くの人に自分たちの実情を知ってほしいという思いがあったから。声を上げることで社会が変わることを今までの活動で学んでいた」と話します。5年前からとりくむアルバイト実態調査の結果から陳情し、流山市の給付型奨学金が制定された成果が、後押ししました。
看護学生の声
○緊急事態宣言で始業が2カ月遅れ、卒業までにすべての授業が終わるか、国家試験が受けられるか心配。
○オンライン授業や臨床実習の短縮で今まで通りの学びが保障されていないと感じる。
○密を避けるために個人学習が増え、十分に学べているか、看護師になれるのか、不安。
○一度ではなく、学業に専念できるよう継続した給付を。
○実習の受け入れをしてもらえなくなった。
○学内実習だけでは十分な技術が身につかない。
○実習中のバイト禁止で収入がなく、生活費に困る。
(民医連新聞 第1731号 2021年2月15日)