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民医連新聞

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相談室日誌 連載491 身寄りなく、いても疎遠 増えるケースにどう対応(愛媛)

 Aさん(60代男性)は生活保護を利用しながら独居生活を送っていました。両親と兄は亡くなり、長男と長女がいますが、離婚後は約20年以上、疎遠な状態です。3人のおいがいますが、そのうち一番下のおいとたまに連絡を取る程度で、かかわりは拒否していました。数日前から動けなくなり、知人の同行で救急搬送され入院。肝機能症状が悪化しており、「残された時間は少ない」との主治医の説明を受け、Aさんは入院継続を希望しました。その際、死亡後の解剖検査に承諾してくれました。
 解剖検査には本人の承諾に加え、直系親族の承諾が必要です。Aさんはあまり自分のことを話す人ではなく、「自分が迷惑かけて離婚した」としか聞けず、長男・長女への連絡はできませんでした。市役所にAさんの存命中に親族へ意思確認ができるよう相談し、対応を急いでもらいました。
 市役所が長男・長女へ連絡したその日のうちに、長女から連絡がありました。長女の夫が来院してAさんと面会し、解剖承諾書の署名を長女へ依頼することができました。その翌日、Aさんは亡くなりました。
 長女はAさんには会わないと決めてはいたものの、「約20年疎遠だったとしても、私の父なので」と涙ながらに話し、解剖承諾書を直接届けてくれました。おいは「私の母(Aさんの兄嫁)との確執で、Aさんとあまりかかわれませんでしたが、市役所と相談し、AさんはAさんの両親のお墓にと考えています」と連絡がありました。今まで疎遠だった人たちが、Aさんとかかわるきっかけづくりができたのではないか、と感じています。
 相談員として働き始めて約1年半になります。その中で、独居で身寄りのない人、親族がいても疎遠な人が多いことを実感しています。今回は早い段階でAさんの親族と連絡が取れ、最終的にAさんの希望に応えることができたのではないかと思います。しかし今後、親族と連絡が取れなかったり、自治体などとの連携に時間がかかり、患者の希望に添うことが難しい場合も増えてくると思います。その場合はどうしたら少しでも力となれるか考え、関係者や関係機関と相談しながら支援をしていきたいと思います。

(民医連新聞 第1730号 2021年2月1日)