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民医連新聞

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副作用モニター情報〈548〉 オルメサルタンによる慢性下痢、 著明な体重減少に警戒を

 この間の副作用モニターで、降圧剤ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の化器系副作用は11件。口渇、口内炎、口唇炎、悪心、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、鼓腸、便秘など、いずれも軽微な症状でした。
 今回は、オルメサルタンによる著明な体重減少を伴う遅発性下痢が報告されました。
症例)70代男性。健診受診前から体重減少はあったが他院で精査されていた。(もともとの体重64kg)。発作性心房細動、高血圧症の診断で、オルメサルタン他処方(前医ではイルベサルタンの配合錠を服用)。(体重54.5kg)。 開始5カ月後、S状結腸がん切除。下痢は術後頃からと記録あるが、頻度の詳細は不明。(体重45kg)。7カ月後、「ここ1年で20kg体重減」の精査目的で入院紹介。(体重42kg)。10カ月後、術後半年のフォローアップ検査実施。上部内視鏡検査では悪性病変を認めず。体重減少の原因となる要因なし。胸部-骨盤部CTでは再発・転移なし。下痢・体重減少の原因となる疾患なし。ほかの原因が否定的であることから、オルメサルタン関連スプルー様腸疾患を疑い、降圧剤を変更。中止1週間後、下痢は止まった。2カ月後、体重は下げ止まり。(体重46kg)。
 オルメサルタン関連スプルー様腸疾患は米FDAが2013年7月に発表し、日本では11月に使用上の注意が改訂され、「長期投与により、体重減少を伴う重度の下痢があらわれることがある」と追記されました。米FDAはオルメサルタンに関連するスプルー様腸疾患の発症機序は不明としながらも、プロドラッグであるolmesartan medoxomil に対して局所性の遅延型過敏症または細胞性免疫応答が生じていることが示唆されるとしています。この作用が他のARBでは観察されない理由もわかっていません。
 薬剤投与後、数カ月から数年かけて進展する場合があり、副作用と結びつかない可能性があります。オルメサルタン配合の薬剤を長期間服用中に重度の慢性下痢と明らかな体重減少が続き、ほかの原因が特定されない場合には、関連性を疑い中止する必要があります。

(民医連新聞 第1730号 2021年2月1日)

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