いのちを守る 年末年始、各地の実践
コロナ禍で多くの人が困窮する年末年始、全国で民医連の仲間がいのちを守る活動にとりくみました。困っていても声をあげられない、相談できない人たちと、どのようにつながり、支援していくことができるのか。各地での模索を紹介します。
東京 女性の困窮浮きぼりに
昨年12月23日、「コロナにまけない! 食料&生活支援プロジェクト」(東京地評・東京社保協・東京民医連の共催)が豊島区南大塚で行われました。
当該地区は池袋に近い場所にあり、ひとり親世帯、学生、外国人労働者、留学生が多い地域です。事前に専用のホームページも作成して、約6000枚のチラシを配布、学生寮も訪問しました。当日の来場者は254人で、健康相談は5人でした。寄付された白米460kg、みかん250kgなどはすべて配りきりました。
来場者のうち、ひとり親世帯と学生がそれぞれ全体の約1割を占め、性別では約7割が女性と、社会的にぜい弱な人たちの困窮が色濃く出ています。
都内多数の地域で同様のとりくみが行われ、「足立たすけあい村」では250人が来場しました。(西坂昌美、事務)
鳥取 アンケートで声ひろい
鳥取民医連では昨年の春以降、コロナ禍に関する電話相談などにかかわってきました。しかし相談件数は毎回わずかで、困っている人とつながる工夫が必要でした。
昨年秋、県連内に「いのちの相談活動プロジェクト」を立ち上げ、アプローチを検討。島根の法人が行った組合員向けアンケートを参考に一般向けにつくりかえ、無料の返信用封筒も同封し、公営住宅を中心に全戸配布しました。昨年末から、県東部・西部の約4500軒に届けました。WEB版アンケートもつくり、QRコードの利用で回答可能にしました。
1月22日時点で回答は150件を超え、相談希望は23人、直接の電話相談も4件ありました。最初に県連事務局が事情を聴き取る際は、群馬民医連が共有してくれた相談票を活用しています。コミュニケーション機会の減少、収入減、さまざまな支払いが滞ってきた、食費を削っているなど、深刻な実態が多く寄せられました。
今後は事業所のない地域への配布や、使える制度の案内を検討中です。また複数の相談者が一度は役所に相談に行ったものの支援制度につながっておらず、行政に窓口対応の改善を求める必要があります。食費を削っている人も多く、支援の検討も課題です。(情報提供:木下直子、事務)
群馬 困窮な相談に寄り添い
昨年12月28日、群馬民医連は反貧困ぐんまと合同で「年末困りごと相談会in太田」を開催しました。開催地の太田市は非正規労働者や外国人労働者の多い地域で、夏にも相談会をしており、今回も市営住宅へのチラシ配布やテレビ、新聞などで宣伝をしました。
当日、60人がフードバンクを利用し、うち34人が相談。その日に9人が生活保護を申請し、3人が住居を確保しました。相談者の約7割は外国人と女性の非正規労働者です。中には病院に搬送した無保険の外国人労働者や、収入が減少し子どもの養育費がないシングルマザーもいました。
昨年4月にコロナ禍で解雇されて路上生活になった50代男性は、自殺を考える中、警察からの紹介で会場に来ました。当時の所持金は12円。何日も食事をしていませんでした。相談後に入居先が決まった男性は、「1年前の正月は職員寮で箱根駅伝を見ていた。こんなことになるとは。コロナが憎い」とうつ向きました。
緊急事態宣言を受け、現在は学生向けの食糧支援にも力を入れています。(情報提供:町田茂、事務)
山口 多面的なとりくみを
昨年12月28日、山口民医連と医療生協健文会の共催で、「年越しなんでも相談会」を宇部協立病院の駐車場で実施しました。12月に入ってから急きょ、組合員と職員合同で実行委員会を立ち上げ、提供する食材の内容、宣伝方法などを相談し準備しました。
当日は60人が利用し、生活相談は4件ありました。フードバンクや各所からの寄付で提供された食材、組合員手づくりの炊き込みご飯などを配り、最後に暮らしのアンケートを記入してもらいました。
参加者の多くは患者など、もともとつながりのある人でしたが、「涙が出るほどうれしい」という女性や、食材を手にして「これで正月が迎えられます」と話す高齢の夫婦もいたそうです。「コロナ禍の影響で事業不振となり、破産申請中。家族関係も悪くなり離婚した」など、深刻な事例も。組合員からは「一回限りではなく、定期的なとりくみが必要では」という声も出ています。
11月から市内の全大学を対象とした月1回の食材支援も行っており、毎回100人以上の申し込みがあります。地域の困難を把握するためには、多方面からのとりくみが必要だと感じました。(深谷太郎、事務)
(民医連新聞 第1730号 2021年2月1日)