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民医連新聞

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相談室日誌 連載490 生活困難だがADL自立 介護保険使えない人の支援(鹿児島)

 60代で身寄りのない男性・Aさん。薬品会社に勤めていましたが数年前に退職し、現在は生活保護を利用しています。
 最初の入院は2019年秋で、腰椎圧迫骨折後のリハビリが目的。本人の希望で介護保険を申請しましたが、ADL自立で「非該当」でした。施設入所を希望するも、「生活保護」「身寄りなし(保証人なし)」を理由に大半の施設で断られ、Aさんは「家に帰るなら死にたい」と話し、病棟師長と話を聞きました。20年初頭、身寄りがなくても相談できる介護施設を通じ、市内の他医療機関へ転院しました。
 転院後に担当者がAさんの自宅を訪問した際に“ゴミ屋敷状態”とわかり、介護保険を再申請しましたが「要支援2」。数カ月後に退院し、自宅は退去。春、市保護課の支援で市内の救護施設に入所しました。
 いったんは日常生活へつながりましたが、新型コロナウイルス感染予防のために生活を制限されることに耐えられず、Aさんは夏に施設を自主退所し、行方がわからなくなりました。その矢先、嘔吐(おうと)下痢・脱水を訴えてAさんが当院外来を受診し、2度目の入院となりました。救護施設への再入所は不可能で、「ホームレス状態」だったとわかり、保護課と地域包括支援センターと連携を開始。Aさんの救護施設入所中にセンター担当者が、身寄りなしで生活保護でも入居できる市内の高齢者向け賃貸住宅に相談をしており、無事入居しました。家具や家電の一部は、鹿児島医療生協の健康まちづくり部から無償提供しました。
 ところが、数週間後に嘔吐下痢で3度目の入院。保護費を使い果たし、所持金がゼロに近い状態でした。次の年金・保護費支給日まで食事を十分にとることが難しく、当生協の理事から食材を提供してもらい生活環境を整え、数日後に退院しました。
 高齢者の退院支援で介護保険サービスの調整は多いですが、Aさんのように介護保険のサービスが使えない、十分にフォローができない現状も強く感じ、地域などとのつながりを強めていくことが必要です。
 現在Aさんは要支援1で、週1回のデイサービスを楽しみにしています。地域包括支援センターのケアマネジャーも定期的に訪問し、連携した支援を続けています。

(民医連新聞 第1729号 2021年1月18日)