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民医連新聞

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環境 医療・介護の現場から気候危機に立ち向かおう 福井民医連 実はCO2大幅削減の可能性を秘めている?!

 「人類の破滅的な未来を回避するには、この10年が勝負」と言われるほど、気候危機は待ったなしの課題です。医療・介護事業所で働く私たちには、何ができるでしょうか? 福井民医連は脱原発にとりくみながら、大きな成果を上げています。(丸山いぶき記者)

 福井・光陽生協クリニックは、病院の建物を転用した築40年余りの施設です。老朽化した館内を快適に保つために、年々光熱費が増え経営を圧迫。東日本大震災後はこれまで以上に脱原発を考える機会が増えました。田嶋清孝事務長は、「原発銀座・福井で、脱原発と環境負荷の軽減をめざし、経営も何とかしたい。でも両立に難しさも感じていた」とふり返ります。
 2016年、環境省のCO2削減ポテンシャル診断推進事業を利用しました。事業所のエネルギー消費状況について専門機関の診断を受け、提案された具体的なCO2削減策にもとづき設備を導入すれば、一定のCO2削減量を達成することを条件に、導入費用の3分の1の補助を受けられる制度です。クリニックでは空調、換気、給湯、照明設備を高効率のものに更新し、電力購入先は原発を所有しない新電力会社に変更。太陽光発電は日照時間の短さや積雪で不利な地域ですが、脱原発の機運を高める思いも込め導入しました。

■CO2も経費も無理なく削減

 きっかけは、福井大学客員教授(当時)で省エネ研究者の宮本重信さんの助言でした。「24時間稼働する病院などの医療機関はエネルギー消費量が多く、有効な対策をすれば削減幅も大きい。綱領で環境を守るとうたっている民医連に期待した」と宮本さん。
 その後、光陽生協病院でも経済産業省の補助事業を使い、導入費用の2分の1の補助を受け省エネ設備を導入し、県連内全11事業所で電力購入先を変更。工事は原発の仕事をしていない業者に発注しています。クリニックでは設備更新後、光熱費とCO2排出量が約半分になりました(図1、2)。
 中でも、随時沸かすガスボイラーから夜間電力を利用した電気式ヒートポンプ(エコキュート)に代えた給湯は、費用対効果の高い更新でした()。1日に使えるお湯の量が限られるので、入浴業務での湯切れが心配でしたが、節水シャワーヘッドに代え、無理なく削減できています。
 毎月の光熱費やCO2削減量は職員に共有し、各職場が節電をしています。クリニックの医事課では、午前の診療が終わると昼当番が不要な照明を消灯。空調は弱めに設定する一方、患者にこまめに声をかけます。病院の検査科は、朝一番に急激に空調の設定温度を変えるのを防ぐために、タイマーで始動させるなどしています。

■「いい成功例」、その秘訣は

 「医療機関の新築や改築では適切な情報がなく、業者に言われるがまま、過剰な設備を導入しがち。その結果、効率が悪くランニングコストがかかる」と田嶋さん。また、採算が合わないと省エネはなかなかすすまないのが現実です。補助金を得るにも膨大な事務作業と、事業所内の調整が必要です。成功の秘訣は「(1)省エネへの信念、(2)いいコンサルタントとの出会い、(3)宮本さんのような利害関係のない第三者の目」でした。
 力を借りた(株)サンワコンの駒野裕一さんは、「すごくいい成功例。今回の経験を次の仕事にも生かしたい」と話します。地元、福井市を本拠地とする企業で、導入後のフォローでも付き合いが続いています。

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 近年、ゼロカーボン宣言を出す自治体が増え、各県に「省エネお助け隊」などのプラットフォーム事業や無料相談窓口もあります。
 光陽生協病院の滝真奈美さん(看護師)は「以前より省エネを意識する職員が増えた。家庭でできることで意外と削減できる。全国でもぜひ」と話していました。

(民医連新聞 第1728号 2021年1月4日)