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民医連新聞

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診察室から 血液出てこい

 初詣や神社に行く機会があれば、神様に何かのお願いをする人は少なくないでしょう。私もご多分に漏れず、機会があれば神頼みをします。そして、初詣や神社でなくても、仕事中に神頼みをしていることがあります。
 私が仕事中にする神頼みの大半は「血がうまくとれますように」です。われながらどこの吸血鬼だ、と思わないでもありません。私が勤める病院は、普通の点滴ルート確保や採血は看護師がしてくれます。彼女・彼らは私よりはるかに上手に採血や点滴ルート確保をしてくれます。
 しかし、手足の血管が非常に細い場合や手足の浮腫が強すぎる場合では、採血・点滴ルート確保が難しくなり、医者が呼ばれます。百戦錬磨の看護師が静脈採血できないので、当然私にできるはずはありません。動脈から採血します。点滴ルート確保は、動脈で行うと大惨事なので「手足の静脈」ではなく「大腿部や首の静脈」という太い静脈から行います。
 もともと血が苦手でした。自分の血はもちろん、人様の血も苦手で、針で刺した出血や刃物で切った出血は見ていると恐怖を覚えました。学生時代、採血の光景を見ては気分が悪くなり、透析機材の血液が満ちた管を見ては倒れた経験もあります(迷走神経反射です)。にもかかわらず、紆余曲折あって医師になりました。わずかな期間、本当にわずかな期間は採血や血管確保に恐怖を覚えていましたが、1カ月もしないうちに恐怖はなくなりました。
 そして、自分が採血や点滴ルート確保を行う際は、とにかく「血液出てこい、血液出てこい」と祈り念じるようになりました。昔は苦手であった血液が出てこないと、今では血の気が引きます。注射器の中に血液が出てくると、内心ガッツポーズをしています。人間、つくづく慣れる生き物だと学びました。
 今年も「神様仏様、血が出てきますように、血が引けますように、血を見られますように」と祈りながら活動していく予定です。(佐藤裕子、愛知・千秋病院)

(民医連新聞 第1728号 2021年1月4日)

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