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民医連新聞

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新型コロナ第三波 介護現場への支援を 介護報酬引き上げ、国の責任で

 コロナ禍で介護現場が苦境に立たされています。事業所の閉鎖もあい次ぎ、倒産件数は過去最多(1~9月までで94件)。第三波とも言われる感染拡大の中で、利用者と家族、職員を守り切れるのか。介護事業所への財政支援とともに、介護職員の処遇改善と事業所の安定運営に向けた介護報酬の大幅な引き上げと、安心して介護を受けられるよう国庫負担を引き上げることこそ必要です。(丸山聡子記者)

 東京・文京区の居宅介護支援事業所健生所長の壁下まゆみさん(ケアマネジャー)は、「区内の介護事業所や利用者から陽性者が出たという情報がいくつも届くようになってきました」と危機感を強めています。

■家族が感染、 利用者は…

 感染リスクを恐れてサービス利用を控え、「言葉が出なくなった」「家族との言い合いが増えた」など、認知症の状態が悪化した利用者も複数います。通所サービスを控えてショートステイの回数を増やしたい人、感染の不安から施設退所を延期した人など、現場は対応に追われています。
 さらに混乱をもたらしているのが、通所介護などを対象に2段階上位区分の報酬算定を認める「第12報」の問題です(厚労省が6月に発出)。利用者にとっては、サービス内容は変わらないのに利用料負担が増えることになります。利用者負担増になる算定は行わない事業所、経営悪化のために算定せざるを得ない事業所など、対応が分かれています。壁下さんは「コロナ禍による経営悪化の補てんを利用者負担で賄うやり方がおかしい。事業所と利用者の分断を招きかねません」と言います。
 心配なのは、介護者である家族が陽性、濃厚接触者となった場合の利用者の行き先です。「行政の対応が定まっておらず、受け入れる施設も訪問するヘルパーも見つかりません。行政主導の対応を早急に考えてほしい」と壁下さん。

■サービスが受けられない?!

 11月25日、全日本民医連など7団体は、介護保険制度の抜本的改善と介護事業者の処遇改善を求める署名2万6235筆を提出する国会行動を実施。厚労省への要請や国会議員と懇談も行いました。
 事前に、認知症の人と家族の会副代表理事の花俣ふみ代さんが「次期報酬改定をめぐる状況とわたしたちの運動」と題して学習会をしました。厚労省は、補足給付(低所得の施設入所者の食費・光熱費・室料などへの補助)を削り、来年8月から、施設の食費で月額2万2000円、短期入所の食費1日当たり210~650円を引き上げるとしています。
 総合事業の対象をこれまでの要支援者から要介護者全般に拡大(弾力化)する方針も示されました。花俣さんは、「要介護1・2の人がもっとも利用するサービスが通所系サービスと訪問介護。それを総合事業にしたら、要介護1・2の人は介護保険サービスから除外される。介護保険料を払い、要介護認定を受けても、介護保険サービスを利用できないのはおかしい」と批判しました。
 オンラインでつないだ各地の介護職場から報告がありました。「コロナ禍でヘルパーを断り、状態が悪化して亡くなったり、家族の収入が激減してサービスを減らすなどの事態が起きている。利用者負担で補てんするやり方に怒りが広がり、撤回を求める意見書に多くの事業所が賛同。北九州市議会は国に撤回を求める意見書を採択した」(福岡)、「介護労働者の疲労は極限状態。札幌市に現場への助成と2区分上位の算定分の補てんを要請した。9月までで市内の8つの事業所が閉鎖。介護の基盤が崩れかねない」(北海道)などの発言があい次ぎました。


コロナ禍に見合う報酬改定を

厚労省・財務省に要望

 全日本民医連は11月24日、来年度介護報酬改定、介護保険の見直しなどについての要望書を厚労省と財務省に提出しました。全日本民医連から平田理副会長、岸本啓介事務局長などが参加しました。
 コロナ以前から経営が厳しかった介護事業所はコロナ禍でさらに危機的な状態だとして、「介護事業所を守り、応援するメッセージとなるような報酬改定を」と訴えました。これに対し、厚労省の担当者は「検討中」との回答にとどめた一方、財務省は「国民負担増にもなる介護報酬のプラス改定は現状にそぐわない」との見解を示しました。岸本さんは、「このままでは地域の介護が崩壊する。早急に国の責任による支援を行うべきだ」と訴えました。

(民医連新聞 第1727号 2020年12月7日・21日合併号)